アンデキサネットアルファの投与が有用であった急性大動脈解離の 1 症例

アンデキサネットアルファ(Andexanet alfa、Aα)は直接作用型活性化第 X 因子(Xa)阻害薬のデコイタンパク質として機能し,Xa 阻害薬による抗凝固作用に拮抗する中和薬である。重篤な合併症の観点から,Xa 阻害薬以外の凝固障害を生じる要因がないことを確認した上で Aα を使用することが推奨されている。しかし,心臓血管手術中に Aα を投与した既存の論文では,臨床所見と Xa 阻害薬の使用歴から投与を決定している症例も多く,血液粘弾性検査を用いて凝固障害の原因を検索し適応を検討した報告は少ない。 われわれは,Xa 阻害薬服用患者に対する心臓血管手術中に危機的出血を経験し,血液粘弾性...

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Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 29; no. 1; pp. 173 - 178
Main Authors 小川 達彦, 黒田 光朗, 大石 梨央, 至田 雄介, 田中 具治, 谷上 祥世
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2025
日本心臓血管麻酔学会
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ISSN1342-9132
1884-7439
DOI10.11478/jscva.2024-2-011

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Summary:アンデキサネットアルファ(Andexanet alfa、Aα)は直接作用型活性化第 X 因子(Xa)阻害薬のデコイタンパク質として機能し,Xa 阻害薬による抗凝固作用に拮抗する中和薬である。重篤な合併症の観点から,Xa 阻害薬以外の凝固障害を生じる要因がないことを確認した上で Aα を使用することが推奨されている。しかし,心臓血管手術中に Aα を投与した既存の論文では,臨床所見と Xa 阻害薬の使用歴から投与を決定している症例も多く,血液粘弾性検査を用いて凝固障害の原因を検索し適応を検討した報告は少ない。 われわれは,Xa 阻害薬服用患者に対する心臓血管手術中に危機的出血を経験し,血液粘弾性検査を用いて凝固障害の原因検索を行った。除外診断として Xa 阻害薬の効果が残存している可能性を考慮し,Aα を投与すると凝固障害は速やかに改善した。複雑な凝固障害が生じうる Xa 阻害薬服用患者の心臓血管手術中に Aα の適応を検討する際には,血液粘弾性検査が有用となる可能性が示唆された。本症例では,術前に併発していた急性腎障害によって Xa 阻害薬の排泄能が低下したことが凝固障害の増悪につながったものの,Xa 阻害薬を直接拮抗する Aα が止血に寄与したと考えられた。
ISSN:1342-9132
1884-7439
DOI:10.11478/jscva.2024-2-011