90歳以上の超高齢者における抑うつ症状と性格傾向に関する研究
90歳以上の超高齢者の抑うつ症状と, 長寿へ至った性格の調査を行った. 対象は90歳~105歳, 平均年齢93±3.2歳の超高齢者33名. 抑うつ症状を評価する手段として Hamilton うつ病評価スケール (以下HRSD) と, 性格傾向を調査するために前田による簡易質問紙法「A型傾向判別法」(以下タイプA) を面接方式にて施行した. HRSDの結果に対し, 多変量解析の因子分析とクラスター分析を行った. またHRSDの評価点とタイプAスコアーの回帰分析を行った. その結果, HRSDの平均は9.7±5.3点で, 何らかの抑うつ症状を有すると思われる, 11点以上の得点者が13名 (39%...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 34; no. 11; pp. 942 - 951 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.11.1997
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Subjects | |
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Summary: | 90歳以上の超高齢者の抑うつ症状と, 長寿へ至った性格の調査を行った. 対象は90歳~105歳, 平均年齢93±3.2歳の超高齢者33名. 抑うつ症状を評価する手段として Hamilton うつ病評価スケール (以下HRSD) と, 性格傾向を調査するために前田による簡易質問紙法「A型傾向判別法」(以下タイプA) を面接方式にて施行した. HRSDの結果に対し, 多変量解析の因子分析とクラスター分析を行った. またHRSDの評価点とタイプAスコアーの回帰分析を行った. その結果, HRSDの平均は9.7±5.3点で, 何らかの抑うつ症状を有すると思われる, 11点以上の得点者が13名 (39%) であった. 各評価項目間の多変量解析の因子分析を行い, 抑うつ症状の表現様式と各々の頻度は, (1)睡眠障害・身体症状型43%, (2)抑うつ気分型29%, (3)心気型21%, (4)関係念慮・強迫型7%, の結果が得られた. 背景として, 種々の喪失体験, 多臓器障害, 近い将来に迎えるであろう死との直面など, 多岐にわたる不安因子の存在の関与が考えられた. 働き盛りを回顧した回答より得られた性格特徴として, タイプAパターンが18名 (56%) でタイプBパターンを上回っていた. 更に全対象者で, タイプAの特徴を支持する, (1) 物事に対する徹底性, (2) 行動に対する自信, (3) 几帳面さ, を問う設問に対して高得点が認められた. 長寿性格として「物事を徹底的に自信をもって几帳面に行なうが, あまりイライラすることもなくマイペース」であることが伺われた. HRSDの得点とタイプAスコアーの間に相関傾向を認めた. 超高齢者は様々な不安因子を有しているので,「寿命の内容」にも目を向けたケアの必要性を強調したい. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.34.942 |