大動脈弁置換術中の大動脈縫合に伴って生じたひきつれにより右冠動脈血流障害をきたした一例

大動脈弁置換術の術中合併症の一つに冠動脈血流障害があり,原因として冠動脈攣縮,塞栓症,物理的狭窄,冠動脈損傷,免疫反応に伴う内膜肥厚などが挙げられる。薬物療法や補助循環により改善が得られない場合は,冠動脈バイパス術などの血行再建術が検討される。今回,大動脈弁置換術中に大動脈の縫合に関連した右冠動脈血流障害が生じ,人工心肺離脱が困難となった症例を経験した。術者が,大動脈の石灰化を伴った狭小弁輪に対して人工弁の縫合操作に難渋していたことから,手術操作による血流障害について術者に確認を促したところ,大動脈切開部の縫合に伴う右冠動脈入口部のひきつれが発見された。同部の修復により血流は改善し,血行再建術...

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Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 29; no. 1; pp. 167 - 171
Main Authors 田中 美緒, 小林 加奈, 柿沼 玲史, 畑平 安香, 河合 未来, 赤堀 貴彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2025
日本心臓血管麻酔学会
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ISSN1342-9132
1884-7439
DOI10.11478/jscva.2024-2-012

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Summary:大動脈弁置換術の術中合併症の一つに冠動脈血流障害があり,原因として冠動脈攣縮,塞栓症,物理的狭窄,冠動脈損傷,免疫反応に伴う内膜肥厚などが挙げられる。薬物療法や補助循環により改善が得られない場合は,冠動脈バイパス術などの血行再建術が検討される。今回,大動脈弁置換術中に大動脈の縫合に関連した右冠動脈血流障害が生じ,人工心肺離脱が困難となった症例を経験した。術者が,大動脈の石灰化を伴った狭小弁輪に対して人工弁の縫合操作に難渋していたことから,手術操作による血流障害について術者に確認を促したところ,大動脈切開部の縫合に伴う右冠動脈入口部のひきつれが発見された。同部の修復により血流は改善し,血行再建術の追加が回避された。本症例から,開心術において冠動脈の血流障害を生じた際の,原因の鑑別の一つとして,大動脈切開部の縫合による冠動脈のひきつれに留意すべきことが示唆された。
ISSN:1342-9132
1884-7439
DOI:10.11478/jscva.2024-2-012