カルバコールによるリンパ球DNA合成の促進 女性の加齢およびアルツハイマー病における変化

女性の健常者群 (N=26, 40~69歳) と, 臨床的にアルツハイマー病と診断された患者群 (N=14, 47~69歳) の両者の末梢リンパ球を使用して培養実験をし, カルバコール投与によるDNA合成促進の誘導を検討した. DNA合成促進の有無はカルバコール非投与群に対する投与群の比 (DNA合成促進率) で判定した. その結果, 健常者群26例中24例, アルツハイマー病患者群14例中13例の検体に対して, カルバコールはDNA合成を促進することが示された. またDNA合成はムスカリン性アンタゴニスト, アトロピンにより阻害されることも示され, カルバコールは末梢リンパ球においてもDNA...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 29; no. 12; pp. 899 - 907
Main Author 古川, 祐一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.12.1992
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.29.899

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Summary:女性の健常者群 (N=26, 40~69歳) と, 臨床的にアルツハイマー病と診断された患者群 (N=14, 47~69歳) の両者の末梢リンパ球を使用して培養実験をし, カルバコール投与によるDNA合成促進の誘導を検討した. DNA合成促進の有無はカルバコール非投与群に対する投与群の比 (DNA合成促進率) で判定した. その結果, 健常者群26例中24例, アルツハイマー病患者群14例中13例の検体に対して, カルバコールはDNA合成を促進することが示された. またDNA合成はムスカリン性アンタゴニスト, アトロピンにより阻害されることも示され, カルバコールは末梢リンパ球においてもDNA合成に関して促進的に働き, その反応はムスカリン性アセチルコリン受容体を介して行われることが証明された. 次に, DNA合成促進率は加齢に伴い減少し, DNA合成促進率 (Y) と年齢 (X) との間には, Y=-0.575X+142.1 (r=-0.505, p<0.01) という相関関係が成立することがわかった. さらに健常者群を40歳代 (N=10), 50歳代 (N=8), 60歳代 (N=8) に分けて, 各世代のDNA合成促進率を比較したところ, 40歳代と60歳代の間に有意差 (p<0.05) が認められた. 一方, 患者群に関しては, DNA合成促進率と年齢, および同促進率と重症度との間には有意な相関は認められなかった. また, 年齢構成を等しくした患者群 (N=13, 55~69歳) と健常者群 (N=11, 57~69歳) との群間比較では, 患者群の方が健常者群に比し, 有意に高いDNA合成促進率を示した (p<0.05).
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.29.899