妊娠中に発症した感染性心内膜炎に対する僧帽弁形成術において全血粘弾性検査を用いて凝固能・線溶能の評価を行った 1 麻酔経験

妊娠中に感染性心内膜炎を起こすことは稀であるが,妊娠中に感染性心内膜炎を合併した場合は,早産,母体死亡率および胎児死亡率が高くなる。今回我々は活動性感染性心内膜炎を合併した 35 歳の妊婦に対し妊娠 26 週 3 日に帝王切開で児を娩出させ,その 3 日後に僧帽弁形成術を施行した際の麻酔管理を経験した。産褥 3 日目で凝固亢進状態が続いていることが推測された。トロンボエラストグラフィー(TEG®6s)を術前に施行すると,フィブリノゲン機能の亢進状態は認められたが,その他の凝固因子機能はやや低下した状態であることが示唆された。また,人工心肺離脱後にTEG®6s を再検すると,フィブリノゲンと凝固...

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Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 29; no. 1; pp. 161 - 166
Main Authors 渡邉 真理子, 鳥羽 好恵, 日比野 世光, 奥井 悠介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2025
日本心臓血管麻酔学会
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ISSN1342-9132
1884-7439
DOI10.11478/jscva.2025-3-008

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Summary:妊娠中に感染性心内膜炎を起こすことは稀であるが,妊娠中に感染性心内膜炎を合併した場合は,早産,母体死亡率および胎児死亡率が高くなる。今回我々は活動性感染性心内膜炎を合併した 35 歳の妊婦に対し妊娠 26 週 3 日に帝王切開で児を娩出させ,その 3 日後に僧帽弁形成術を施行した際の麻酔管理を経験した。産褥 3 日目で凝固亢進状態が続いていることが推測された。トロンボエラストグラフィー(TEG®6s)を術前に施行すると,フィブリノゲン機能の亢進状態は認められたが,その他の凝固因子機能はやや低下した状態であることが示唆された。また,人工心肺離脱後にTEG®6s を再検すると,フィブリノゲンと凝固因子機能は術前よりも低下したが産生される血餅強度は正常であり,術野での止血がなされていることも考慮して新鮮凍結血漿や血小板製剤の投与は行わなかった。また,線溶系の亢進状態は認められなかった。出産時の出血量や産道の損傷の程度などが影響し,産褥期の凝固能は個人差が大きいことが推測されるため,産褥初期に開心術を行った本症例において TEG®6s を用いた凝固能の詳細な評価は輸血方針決定の一助となった。
ISSN:1342-9132
1884-7439
DOI:10.11478/jscva.2025-3-008