心臓大血管手術と脳波

心臓大血管手術をうける患者の脳は,周術期における脆弱性が指摘されているが,麻酔と全身管理を担う麻酔科医はどうやって患者の脳機能を守ることができるのだろうか。全身麻酔薬は脳や中枢神経に作用し効果を発揮するため,脳の活動をモニタリングすることに意義がある。脳波(脳電図)は心電図と同様の原理で脳の電気的活動を体表から計測し,非侵襲的に脳の状態や麻酔薬の効果についての情報を得られる。麻酔科領域でもデジタル信号処理技術を応用した脳波モニターが普及,前額部に貼付した電極から信号をリアルタイムで解析し,麻酔深度の簡易的な数値的指標などを表示する。麻酔中の脳波の変化は麻酔薬の影響によるものが主であるが,年齢や...

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Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 29; no. 1; pp. 5 - 11
Main Authors 宮坂 清之, 長坂 安子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2025
日本心臓血管麻酔学会
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ISSN1342-9132
1884-7439
DOI10.11478/jscva.2024-1-009

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Summary:心臓大血管手術をうける患者の脳は,周術期における脆弱性が指摘されているが,麻酔と全身管理を担う麻酔科医はどうやって患者の脳機能を守ることができるのだろうか。全身麻酔薬は脳や中枢神経に作用し効果を発揮するため,脳の活動をモニタリングすることに意義がある。脳波(脳電図)は心電図と同様の原理で脳の電気的活動を体表から計測し,非侵襲的に脳の状態や麻酔薬の効果についての情報を得られる。麻酔科領域でもデジタル信号処理技術を応用した脳波モニターが普及,前額部に貼付した電極から信号をリアルタイムで解析し,麻酔深度の簡易的な数値的指標などを表示する。麻酔中の脳波の変化は麻酔薬の影響によるものが主であるが,年齢や体温など麻酔以外の因子によっても影響を受ける。年齢や併存症が増えるほど,少ない麻酔薬濃度でも容易に脳の活動が抑制される傾向があり,術後にせん妄など認知機能障害の発生が懸念される。術前からの評価で影響を見極めることや,術中の管理により減少できる可能性が示唆されている。脳波を用いた麻酔管理で患者の予後が改善するというエビデンスが増えてきている。
ISSN:1342-9132
1884-7439
DOI:10.11478/jscva.2024-1-009