右内頸静脈からの脱血管留置に際してガイドワイヤーが後縦隔内へ迷入した低侵襲心臓手術予定の一症例

症例は 61 歳男性,身長 151.2 cm,体重 48.5 kg.重度僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁形成術(右肋間開胸,大腿動脈送血,上下大静脈脱血による低侵襲心臓手術)が予定された.上大静脈脱血管挿入は麻酔科医 2 名で行った.超音波ガイド下穿刺によりガイドワイヤーの留置までは問題がなかったが,脱血管刺入部拡張の際にダイレータが患者左側方向へと不自然な向きに挿入された.ガイドワイヤーは引くと抵抗があり,胸部 X 線透視下では気管の裏を通過して正中を超え,対側の後縦隔にまで達していた.ダイレータを再挿入して屈曲部を収納し,共に抜去することでガイドワイヤーの大半はスムーズに抜去できたが,ループ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 29; no. 1; pp. 197 - 201
Main Authors 熊谷 基, 中野 雄介, 脇本 将寛, 鈴木 健二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2025
日本心臓血管麻酔学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1342-9132
1884-7439
DOI10.11478/jscva.2025-3-014

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は 61 歳男性,身長 151.2 cm,体重 48.5 kg.重度僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁形成術(右肋間開胸,大腿動脈送血,上下大静脈脱血による低侵襲心臓手術)が予定された.上大静脈脱血管挿入は麻酔科医 2 名で行った.超音波ガイド下穿刺によりガイドワイヤーの留置までは問題がなかったが,脱血管刺入部拡張の際にダイレータが患者左側方向へと不自然な向きに挿入された.ガイドワイヤーは引くと抵抗があり,胸部 X 線透視下では気管の裏を通過して正中を超え,対側の後縦隔にまで達していた.ダイレータを再挿入して屈曲部を収納し,共に抜去することでガイドワイヤーの大半はスムーズに抜去できたが,ループ部が残ったため外科的に頸部を小切開して抜去した.手術は延期され,フォローアップ CT で脈管損傷や血腫形成のなきことを確認した.中心静脈カテーテル等の挿入時には気胸や血胸,血腫形成など様々な機械的合併症が起こりうることを念頭に置き,プラクティカルガイドを遵守し,時にはリアルタイム胸部 X 線透視下に挿入するなどの安全策を考慮すべきである.特に内頸静脈からの脱血管は径が太いため,より慎重な手技を心がけるようにしたい.
ISSN:1342-9132
1884-7439
DOI:10.11478/jscva.2025-3-014