少量タクロリムス療法が有効であった再燃を繰り返す全身性エリテマトーデス症例
近年, 積極的な免疫抑制療法の施行により全身性エリテマトーデス (SLE) の予後は改善しつつあるが, 既存の免疫抑制療法抵抗性で難治の経過を辿る症例も存在する。このような症例に対する一定の治療法はいまだ確立されていない。今回われわれは, 低用量タクロリムス (TL) が著効した難治性SLEの1例を経験した。症例は11歳時発症の25歳男性。発症時, びまん性増殖性ループス腎炎を合併, 高用量プレドニゾロンとミゾリビンの併用で寛解した。寛解後約4年間は無投薬で経過観察が可能となったが, 21歳時に再燃, ステロイドパルス療法, 高用量ミゾリビン, シクロスポリン, シクロフォスファミドパルス療法...
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Published in | 日本腎臓学会誌 Vol. 49; no. 8; pp. 1020 - 1024 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本腎臓学会
25.11.2007
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ISSN | 0385-2385 1884-0728 |
DOI | 10.14842/jpnjnephrol1959.49.1020 |
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Summary: | 近年, 積極的な免疫抑制療法の施行により全身性エリテマトーデス (SLE) の予後は改善しつつあるが, 既存の免疫抑制療法抵抗性で難治の経過を辿る症例も存在する。このような症例に対する一定の治療法はいまだ確立されていない。今回われわれは, 低用量タクロリムス (TL) が著効した難治性SLEの1例を経験した。症例は11歳時発症の25歳男性。発症時, びまん性増殖性ループス腎炎を合併, 高用量プレドニゾロンとミゾリビンの併用で寛解した。寛解後約4年間は無投薬で経過観察が可能となったが, 21歳時に再燃, ステロイドパルス療法, 高用量ミゾリビン, シクロスポリン, シクロフォスファミドパルス療法の効果は一過性であり, 全身の皮疹, 四肢末端の潰瘍形成, 脱毛, 発熱, 蛋白尿などの再燃を繰り返した。最近の再燃時は発熱と血清CRP値, フェリチン値, 可溶性IL-2レセプター値の上昇, および貧血, 血小板減少を伴い, 高サイトカイン血症の関与が示唆された。今回, 当科入院時に, 同意を得たうえで成人関節リウマチ治療に準じた低用量TL(3mg/日)夜1回投与を開始した (血中濃度内服12時間値, 3~5ng/mL前後)。TL開始により短期間で臨床所見, 各種検査成績ともに改善 (SLE disease activity index は26点から6点へ減少), プレドニゾロン減量, 職場復帰が可能となった。 今後, より詳細な検討が必要であるが, TLは既存の免疫抑制薬に抵抗性を示すSLE症例の一部において治療選択肢の一つとなる可能性がある。 |
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ISSN: | 0385-2385 1884-0728 |
DOI: | 10.14842/jpnjnephrol1959.49.1020 |