耐熱性を有するメタン合成用ニッケル-モリブデン合金触媒

耐熱性メタン合成触媒の重要性が認識されつつある。一酸化炭素と水素からの代替天然ガス製造プロセスやメタンを媒体とするケミカルヒートパイプシステムに耐熱性触媒を使用する際には, 従来の触媒より高い温度領域で使用することが可能なため, プロセスの簡素化や総合熱効率の大幅な向上が期待されるためである。 メタン合成反応に従来用いられているニッケル系触媒は活性, 選択性の双方において非常に優れているが, 高温反応時には, 活性金属種であるニッケルの焼結や触媒上への炭素質析出による活性劣化が起こりやすいという問題点があった。 ここではニッケル触媒ヘモリブデンを添加して得たアルミナ担持ニッケル-モリブデン合金...

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Published in石油学会誌 Vol. 24; no. 6; pp. 363 - 370
Main Authors 荒木, 道郎, 高谷, 晴生, 鈴木, 邦夫, 新, 重光, 細矢, 忠資, 小川, 清, 藤堂, 尚之
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 石油学会 1981
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Summary:耐熱性メタン合成触媒の重要性が認識されつつある。一酸化炭素と水素からの代替天然ガス製造プロセスやメタンを媒体とするケミカルヒートパイプシステムに耐熱性触媒を使用する際には, 従来の触媒より高い温度領域で使用することが可能なため, プロセスの簡素化や総合熱効率の大幅な向上が期待されるためである。 メタン合成反応に従来用いられているニッケル系触媒は活性, 選択性の双方において非常に優れているが, 高温反応時には, 活性金属種であるニッケルの焼結や触媒上への炭素質析出による活性劣化が起こりやすいという問題点があった。 ここではニッケル触媒ヘモリブデンを添加して得たアルミナ担持ニッケル-モリブデン合金触媒について高温メタン合成反応における耐熱性を検討し, さらに関連する触媒である無担持ニッケル-モリブデン合金触媒, アルミナ担持ニッケル触媒およびモリブデン触媒の耐熱性と比較検討した。 触媒の耐熱性の評価は, 650°C, 80kg/cm2, GHSV=15,000hr-1の条件下で一酸化炭素15%, 水素45%, メタン40%を含む原料ガスを用いて, 数日間, メタン合成反応を行い, 2日おきに触媒床温度を400°Cおよび500°Cに下げて, その温度におけるメタン合成活性の経時変化を追跡, 比較することにより行った。その結果, アルミナ担持ニッケル-モリブデン合金触媒では, Fig. 1に示すように, 耐熱試験期間中の初期の5日間, 高い活性を保持した。無担持ニッケル-モリブデン合金触媒ではFig. 2に示すように, 前者にくらべ低いが, 安定した活性を16日間にわたり示した。一方, アルミナ担持ニッケル触媒 (Fig. 3) では活性劣化が著しく, アルミナ担持モリブデン触媒 (Fig. 4) では低活性であった。X線回折による触媒構造の解析結果をFig. 5に示した。耐熱試験後のアルミナ担持ニッケル-モリブデン合金触媒は約10%のモリブデンを含むニッケル-モリブデン合金, 炭化モリブデンおよびアルミナ担体よりなっていることがわかった。当触媒の炭素含有率はFig. 6に示すように, 耐熱試験の1日目に急激に増加したが, その後10日間, 1.6%の一定値を保った。この1.6%のうち, 1.2%は触媒中に存在する炭化モリブデン (Mo2C) にもとづくから, その他の炭素分, すなわち, 触媒床の圧力損失に結びつくフリーの炭素質の生成量は小さいと考えられる。 モリブデンとの合金化によりもたらされたニッケル金属中の電子密度の減少は, 一酸化炭素の解離吸着, すなわち, メタン生成と炭素質生成の双方に活性な表面炭素種の生成を抑制するが, 同時に水素の吸着を促進する。その結果, 合金化により炭素質の生成をおさえることができたと考えられる。また, ニッケル原子のアンサンブルが一酸化炭素の活性化に必要であるといわれており, その程度は触媒表面の最近接ニッケル原子同志の距離に依存すると思われるが, モリブデンとの合金化により広げられたニッケル表面のニッケル-ニッケル原子間距離が炭素質析出の抑制にちょうど好都合であったとも考えられる。
ISSN:0582-4664
DOI:10.1627/jpi1958.24.363