カキ礁による有明海貧酸素水塊の抑制効果

有明海では夏季に貧酸素水塊が形成され,二枚貝をはじめとした海洋生物に重大な被害を与えている.その軽減・解消は今後の環境再生にとって必須の課題となっている.本研究ではその手段として干潟上に形成されるカキ礁に注目した.カキ礁を組み込んだ生態系モデルを開発し,その貧酸素化抑制効果について検討した.開発したモデルは観測された溶存酸素濃度変動を精度良く再現することに成功した.カキ礁はその濾水能力によって植物プランクトンおよび懸濁態有機物濃度を下げ,その結果カキ礁周辺のみではなく,より広い範囲で底層溶存酸素濃度の上昇が確認された.現存するカキ礁は貧酸素化の規模を最大4割程度抑えているということが明らかとな...

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Published in沿岸海洋研究 Vol. 53; no. 1; pp. 25 - 38
Main Authors 山口, 創一, 速水, 祐一, 木元, 克則
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海洋学会 沿岸海洋研究会 2015
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Summary:有明海では夏季に貧酸素水塊が形成され,二枚貝をはじめとした海洋生物に重大な被害を与えている.その軽減・解消は今後の環境再生にとって必須の課題となっている.本研究ではその手段として干潟上に形成されるカキ礁に注目した.カキ礁を組み込んだ生態系モデルを開発し,その貧酸素化抑制効果について検討した.開発したモデルは観測された溶存酸素濃度変動を精度良く再現することに成功した.カキ礁はその濾水能力によって植物プランクトンおよび懸濁態有機物濃度を下げ,その結果カキ礁周辺のみではなく,より広い範囲で底層溶存酸素濃度の上昇が確認された.現存するカキ礁は貧酸素化の規模を最大4割程度抑えているということが明らかとなった.モデルを用いて新たにカキ礁を造成したケースについて検討した結果,さらなる貧酸素化の抑制効果が確認出来た.しかしながら貧酸素化の解消とまでは至らないと考えられ,他の対策と併用する必要性があることが分かった.
ISSN:1342-2758
2434-4036
DOI:10.32142/engankaiyo.53.1_25