臨床 早期ステロイド剤投与が奏功したと考えられた劇症型心筋炎の4症例

【目的】心筋炎への早期ステロイド投与は動物実験結果のほとんどが否定的であるが,一方で臨床例での著効例も報告され,その功罪は論争の的となっている.今回,早期ステロイド剤投与が奏功した劇症型心筋炎を経験したので報告する.【対象と方法】劇症型心筋炎を発症した男性3例と女性1例にメチルプレドニゾロン(初回:1000mg/日)またはプレドニゾロン(初回30mg/日)を発症7日以降(発症7~14日)に投与した.【結果】入院後,大動脈バルーンパンピング(IABP)を1例,体外式ペースメーカーを2例に装着した.4例全例で血清CPKの上昇が見られた.冠動脈造影検査を施行した3例では異常所見を認めず,心筋生検では...

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Published in心臓 Vol. 29; no. 1; pp. 32 - 40
Main Authors 長尾, 伊知朗, 鈴木, 英彦, 西谷, 一晃, 杉村, 浩之, 星, 俊安, 沼尾, 聡之, 大井田, 史継, 小川, 研一, 飯塚, 昌彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1997
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Summary:【目的】心筋炎への早期ステロイド投与は動物実験結果のほとんどが否定的であるが,一方で臨床例での著効例も報告され,その功罪は論争の的となっている.今回,早期ステロイド剤投与が奏功した劇症型心筋炎を経験したので報告する.【対象と方法】劇症型心筋炎を発症した男性3例と女性1例にメチルプレドニゾロン(初回:1000mg/日)またはプレドニゾロン(初回30mg/日)を発症7日以降(発症7~14日)に投与した.【結果】入院後,大動脈バルーンパンピング(IABP)を1例,体外式ペースメーカーを2例に装着した.4例全例で血清CPKの上昇が見られた.冠動脈造影検査を施行した3例では異常所見を認めず,心筋生検ではリンパ球浸潤が確認された.また,1例ではインフルエンザウイルスのペア血清抗体価の上昇を認めた.ステロイド剤投与直後に4例全例で延長していたP-Q時間,QRS時間の速やかな短縮が認められ,つづいてカテコールアミン,IABP等からの離脱が可能となった.また重篤な合併症は見られなかったが,1例で膵炎を発症し血清CPK値が可上昇した.【考察】ステロイドは細胞障害型T細胞,サイトカイン産生,マクロファージやNK細胞活性の抑制作用を有し,心筋炎に対する有益な効果が期待される.殊に急性期では重度の伝導障害が心不全を増悪させることから,ステロイドによる伝導障害の改善は血行動態の回復に大きな役割を果たすと考えられる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.29.1_32