潤滑油留分の13C NMRによる構造解析
アラビアンライト原油の分子量の異なる二種の潤滑油留分(分子量350と450)-常圧残油の減圧蒸留留出油-およびそれらを溶剤抽出処理したラフィネート, 抽出油; ラフィネートの水素化精製油; さらに脱ろう処理した脱ろう油, ろうについて13C NMRスペクトルを用いて構造解析を行った。Figs. 1, 2に低沸点留分の各油および流動パラフィンの13CNMRスペクトルを示した。留出油, ラフィネートでは芳香族炭素の吸収は弱い幅広の吸収として現れ, 脂肪族領域には特徴的な鋭い吸収が多数現れた。Fig. 3に示したように, 29.7ppmの吸収は長鎖中のメチレン基, 14.1ppmの吸収は長鎖末端のメ...
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Published in | 石油学会誌 Vol. 24; no. 3; pp. 151 - 159 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
公益社団法人 石油学会
1981
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ISSN | 0582-4664 |
DOI | 10.1627/jpi1958.24.151 |
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Summary: | アラビアンライト原油の分子量の異なる二種の潤滑油留分(分子量350と450)-常圧残油の減圧蒸留留出油-およびそれらを溶剤抽出処理したラフィネート, 抽出油; ラフィネートの水素化精製油; さらに脱ろう処理した脱ろう油, ろうについて13C NMRスペクトルを用いて構造解析を行った。Figs. 1, 2に低沸点留分の各油および流動パラフィンの13CNMRスペクトルを示した。留出油, ラフィネートでは芳香族炭素の吸収は弱い幅広の吸収として現れ, 脂肪族領域には特徴的な鋭い吸収が多数現れた。Fig. 3に示したように, 29.7ppmの吸収は長鎖中のメチレン基, 14.1ppmの吸収は長鎖末端のメチル基, などと帰属でき, 長い直鎖メチレンの存在が示唆される。抽出油では芳香族領域, 脂肪族領域ともに幅広の吸収が強く現れ, 芳香族炭素が多く脂肪族炭素はナフテン系炭素や短かいアルキル置換基として存在すると考えられる。脱ろう油では14.1ppmの吸収に対する29.7ppmの吸収強度が留出油, ラフィネートより弱く, ろう分が除かれたことが示唆され, ろうではほとんど直鎖メチレン基に属する吸収のみである。これらの油に対し流動パラフィンでは, 枝分かれ付近の炭素の吸収が強く現れ, 石油留分にくらべ, より平均的な構造を有している。5本の特微的な吸収に属する平均一分子中の炭素数をTable 4に示した。 1H NMRより得られた水素分布, Table 2に示した帰属により得た炭素分布 (Table 3) と, 分子量, 元素分析値からTable 5に示したような平均構造パラメーターを求め, Table 6に示した。Han (芳香族水素の数) とCun (水素のついている芳香族炭素の数) はこれらの油ではよく一致し, Table 2に示した13C NMRスペクトルの区分が適切であるということができる。水素分布より, Brown-Ladner の式 (Eq.(1)) を用い, x=y=2.0として求めた芳香族性faHは, 炭素分布より直接求めた(Eq.(4))芳香族性faCよりも低い値を示した。これは, これらの油の分子量が400程度と低いため, アルキル鎖末端のメチル基の存在を無視し得なくなり脂肪族炭化水素を平均的にCH2とすることによる誤差が大きくなったためと考えられる。(Eq.(1)の右辺)=faCとおき, x=yとしてxの値を逆算すると2.06~2.22となった。 芳香核のα位の水素数, Hαnをxで割り, アルキル置換基の数, Cαnを求め, 芳香族炭素数よりCαnとHanを引き縮合点炭素の数(Ccn)を求めた(Eq.(9))。これらの値より, 低沸点留分のラフィネート, 脱ろう油では平均一分子中にベンゼン環が1/2個, 抽出油ではナフタレン環が一個程度存在することが明らかとなった。さらにTable 4により得られた脂肪族炭素に関する情報を加え, 平均一分子の構造モデルを描き, Fig. 4に示した。油の分子量が低いため一個のモデルで代表させることはでぎず, A, B二個のモデルの特徴を合わせもったものとして表した。ラフィネートではかなり長い直鎖メチレン基が存在し, 脱ろう油ではこれがやや短かく, 抽出油では脂肪族炭素はナフテンもしくは短かいアルキル置換基となり, ろうでは芳香族炭素はほとんどなく, しかも直鎖メチレンが大部分を占めている。これらの構造モデルは, 潤滑油精製工程における各油の特徴をよく表しているものと考えられる。 |
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ISSN: | 0582-4664 |
DOI: | 10.1627/jpi1958.24.151 |