腹部アンギーナに対して正中弓状靭帯切離とバイパス手術を行った1例

われわれは,腹腔動脈(celiac artery: CA)狭窄・上腸間膜動脈(superior mesenteric artery: SMA)閉塞を認めた腹部アンギーナに対して,正中弓状靭帯切離・バイパス手術を行った1例を経験したので,動脈病変の病因の鑑別診断と治療法を中心に,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は71歳女性で,3カ月前から心窩部痛を自覚し,その後腹痛・嘔吐・下痢を認めた.造影CT検査では,厚い壁在血栓を伴い瘤状拡張した胸腹部大動脈を認めた.CAの起始部より約3 cm末梢側のCA中枢部に鉤状の高度狭窄(hooked appearance・エコー所見のhook signに相当)...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 33; no. 5; pp. 265 - 269
Main Authors 森, 久弥, 髙木, 寿人, 中村, 優飛, 波里, 陽介, 内藤, 敬嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 26.09.2024
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Summary:われわれは,腹腔動脈(celiac artery: CA)狭窄・上腸間膜動脈(superior mesenteric artery: SMA)閉塞を認めた腹部アンギーナに対して,正中弓状靭帯切離・バイパス手術を行った1例を経験したので,動脈病変の病因の鑑別診断と治療法を中心に,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は71歳女性で,3カ月前から心窩部痛を自覚し,その後腹痛・嘔吐・下痢を認めた.造影CT検査では,厚い壁在血栓を伴い瘤状拡張した胸腹部大動脈を認めた.CAの起始部より約3 cm末梢側のCA中枢部に鉤状の高度狭窄(hooked appearance・エコー所見のhook signに相当)を認めた.SMA起始部は閉塞し,末梢はCAからの側副血行路で造影されていた.以上よりSMA閉塞・正中弓状靭帯症候群によるCA狭窄と診断した.血管内治療は大動脈の石灰化と壁在血栓で困難と判断し,準緊急開腹手術を行うこととした.まず正中弓状靭帯を切離したが腸管虚血は改善せず,CAおよびSMAへのバイパス手術を追加した.グラフト血流は良好で腸管虚血は改善し,食後の腹痛は消失した.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.24-00036