症例 重症冠動脈硬化症に腹部大動脈閉塞症を合併し両側内胸動脈が虚血下肢への重要な側副血行路であった1治験例

症例は,60歳男性.狭心症および間欠性跛行で内科治療中に,胸痛増悪し切迫心筋梗塞と診断され入院.冠動脈および大動脈造影施行し,重症3枝病変と腎動脈分枝後の高位腹部大動脈完全閉塞を認めた.大動脈造影では下肢動脈への十分な側副血行路を確認できず,両側内胸動脈造影により上・下腹壁動脈を介する外腸骨動脈への側副血行路を確認した.冠動脈バイパス術の適応と考えられたが,グラフトとして左内胸動脈を用いた場合,左下肢の虚血壊死を招く可能性を考慮し,静脈グラフトを用いて冠動脈バイパス術を施行した. 下肢閉塞性動脈硬化症では,内胸動脈が下肢動脈への重要な側副血行路となっていることがあり,冠硬化症合併例の術式決定や...

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Published in心臓 Vol. 30; no. 2; pp. 86 - 90
Main Authors 桜井, 秀彦, 岡田, 了三, 渡辺, 隆, 細田, 泰之, 山口, 洋, 横井, 尚, 木下, 真弓, 笹栗, 志郎, 宮内, 克巳, 大橋, 聡, 川村, 正樹, 代田, 浩之, 鈴木, 宏昌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1998
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.30.2_86

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Summary:症例は,60歳男性.狭心症および間欠性跛行で内科治療中に,胸痛増悪し切迫心筋梗塞と診断され入院.冠動脈および大動脈造影施行し,重症3枝病変と腎動脈分枝後の高位腹部大動脈完全閉塞を認めた.大動脈造影では下肢動脈への十分な側副血行路を確認できず,両側内胸動脈造影により上・下腹壁動脈を介する外腸骨動脈への側副血行路を確認した.冠動脈バイパス術の適応と考えられたが,グラフトとして左内胸動脈を用いた場合,左下肢の虚血壊死を招く可能性を考慮し,静脈グラフトを用いて冠動脈バイパス術を施行した. 下肢閉塞性動脈硬化症では,内胸動脈が下肢動脈への重要な側副血行路となっていることがあり,冠硬化症合併例の術式決定や腹部手術における腹壁横切開時にも注意を要する.下肢閉塞性動脈硬化症における両側内胸動脈造影の重要性に関して文献的考察を加え,報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.30.2_86