症例 興味ある心電図経過を示した肺血栓・塞栓症の1例

症例は61歳男性で,1カ月前より息切れが出現し,徐々に悪化したため入院となる.入院時は意識清明,安静時息切れあり,起坐呼吸.PaO249mmHgと低下,心電図(SI,TIII),心エコー図(右室拡大など)所見より肺血栓・塞栓症を疑い,肺血流シンチグラムにて診断し,ウロキナーゼ・ヘパリン療法により治療を開始した.翌日には症状は改善し,右室収縮期圧も80mmHgから30mmHgとなった.心電図経過は,右室圧低下と心エコー上の右室拡大の改善とともにSI,TIIIは消失し,移行帯も改善した. 胸部誘導V 1 ~ 3 の陰性T 波は, 治療後, 圧の低下した翌日から認められ,その後徐々に改善した.後日,...

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Published in心臓 Vol. 28; no. 1; pp. 69 - 75
Main Authors 清水, 達也, 田宮, 栄治, 羽田, 勝征, 伊藤, 敦彦, 家城, 恵子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1996
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.28.1_69

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Summary:症例は61歳男性で,1カ月前より息切れが出現し,徐々に悪化したため入院となる.入院時は意識清明,安静時息切れあり,起坐呼吸.PaO249mmHgと低下,心電図(SI,TIII),心エコー図(右室拡大など)所見より肺血栓・塞栓症を疑い,肺血流シンチグラムにて診断し,ウロキナーゼ・ヘパリン療法により治療を開始した.翌日には症状は改善し,右室収縮期圧も80mmHgから30mmHgとなった.心電図経過は,右室圧低下と心エコー上の右室拡大の改善とともにSI,TIIIは消失し,移行帯も改善した. 胸部誘導V 1 ~ 3 の陰性T 波は, 治療後, 圧の低下した翌日から認められ,その後徐々に改善した.後日,再発作時にもSI,TIIIが出現し,同様の変化の経過をみた.冠動脈造影は正常であった.これらの所見からSIは右室の拡張・圧負荷に伴う影響が示唆された. また, V 1 ~ 3 の陰性T 波は少し遅れて治療後にみられており,右室心筋虚血の回復過程や急激な伝導状態の変化による影響をはじめ何らかの再分極への変化を反映する所見と考えた. 本症は肺血栓・塞栓症の心電図所見を考える上で参考となる経過をとったので報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.28.1_69