症例 左室局所壁運動異常を呈し急性心筋梗塞と紛らわしかったクモ膜下出血の1例

心肺停止をきたしST上昇と左室局所壁運動異常より,急性心筋梗塞の診断で治療したが,後日クモ膜下出血であった事が判明した1例を経験した.症例は73歳,男性.平成5年6月1日心肺停止となり心肺蘇生を受けながら当院に搬送された.心電図はI,II,III,aVL,aVF,V2~6でSTが上昇し,心エコー図では左室前壁の局所壁運動異常を認め,急性心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影を施行したが,正常冠動脈であった.冠動脈攣縮による急性心筋梗塞と診断し治療したが,後日意識レベルが低下したため頭部CTを施行したところクモ膜下出血であった.心エコー図では左室壁運動は正常化していた.CK-MBは,48時間後に120....

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Published in心臓 Vol. 30; no. 1; pp. 54 - 59
Main Authors 高橋, 稔, 神林, 宗, 中泉, 博幹, 中畑, 潤一, 山口, 利夫, 朱, 敏秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1998
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Summary:心肺停止をきたしST上昇と左室局所壁運動異常より,急性心筋梗塞の診断で治療したが,後日クモ膜下出血であった事が判明した1例を経験した.症例は73歳,男性.平成5年6月1日心肺停止となり心肺蘇生を受けながら当院に搬送された.心電図はI,II,III,aVL,aVF,V2~6でSTが上昇し,心エコー図では左室前壁の局所壁運動異常を認め,急性心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影を施行したが,正常冠動脈であった.冠動脈攣縮による急性心筋梗塞と診断し治療したが,後日意識レベルが低下したため頭部CTを施行したところクモ膜下出血であった.心エコー図では左室壁運動は正常化していた.CK-MBは,48時間後に120.7ng/ml(正常値4.8以下)と最高値に達し5日後に正常となったが,通常の心筋梗塞の経過より遷延していた.脳動脈瘤に対しては,後日クリッピング術を施行し経過は良好であった.2カ月後に冠動脈攣縮誘発試験を施行したが,陰性であった. クモ膜下出血に伴う左室機能障害の機序として,カテコールアミンによる心筋傷害や冠動脈攣縮が推測されているが,詳細は不明である.本例のごとくST上昇と左室局所壁運動異常を伴うクモ膜下出血の症例は,急性心筋梗塞と粉らわしく留意が必要であり,また左室機能障害の機序を検討する上でも興味深いと思われ報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.30.1_54