症例 複数回の再発と異なる壁運動異常を呈した,たこっぼ型心筋症の1例

3回にわたり再発し,たこつぼ型と逆たこっぼ型の壁運動異常を示した症例を経験した. 患者は女性で,58歳と63歳および66歳時に突然の胸痛で発症し,心電図変化より急性冠症候群を疑われて緊急心臓カテーテル検査を施行された.いずれの発作時も心外膜側の冠動脈に有意狭窄は認められなかったが,左室造影では第1回と第2回時は心基部の過収縮と心尖部の無収縮を呈し,第3回時は心尖部の過収縮と心中央部前壁の無収縮を呈していた.保存的な加療により合併症なく経過し,心電図は明らかな異常を残さずに改善した.約1カ月後に再検された左室造影では,壁運動は正常化していた.ドプラーワイヤーにて計測した冠予備能は,急性期に低下し...

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Published in心臓 Vol. 36; no. 1; pp. 21 - 29
Main Authors 阿部, 正宏, 森崎, 倫彦, 栗原, 正人, 藤縄, 学, 三津山, 勇人, 飯野, 均, 山科, 章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2004
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Summary:3回にわたり再発し,たこつぼ型と逆たこっぼ型の壁運動異常を示した症例を経験した. 患者は女性で,58歳と63歳および66歳時に突然の胸痛で発症し,心電図変化より急性冠症候群を疑われて緊急心臓カテーテル検査を施行された.いずれの発作時も心外膜側の冠動脈に有意狭窄は認められなかったが,左室造影では第1回と第2回時は心基部の過収縮と心尖部の無収縮を呈し,第3回時は心尖部の過収縮と心中央部前壁の無収縮を呈していた.保存的な加療により合併症なく経過し,心電図は明らかな異常を残さずに改善した.約1カ月後に再検された左室造影では,壁運動は正常化していた.ドプラーワイヤーにて計測した冠予備能は,急性期に低下し,慢性期に改善を認めた.心筋シンチグラフィーでは壁運動異常部位に一致して血流/代謝乖離を認めた.たこつぼ型心筋症の成因として,一過性の局所微小循環障害により生じた気絶心筋の関与が示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.36.1_21