臨床 閉塞性動脈硬化症あるいは腹部大動脈瘤に合併する虚血性心疾患の特徴

閉塞性動脈硬化症(ASO)あるいは腹部大動脈瘤(AAA)にしばしば虚血性心疾患が合併し,ASO,AAA症例の予後は合併する虚血性心疾患により左右される.これまで器質的冠狭窄の合併頻度の報告は多いが,冠攣縮の頻度に関する報告は少ない.今回の研究では,手術適応のASO,AAA症例に対してエルゴノビン負荷を含む冠動脈造影を施行し,有意冠狭窄の合併頻度に加え冠攣縮の合併頻度について検討した結果,有意冠狭窄合併率は71例中30例(42.3%)であり,またエルゴノビン負荷陽性率は61例中24例(39.3%)と高率であった.さらに無症候性心筋虚血を71例中16例(22.5%)と高率に認めた.一方,手術適応A...

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Published in心臓 Vol. 29; no. 1; pp. 25 - 31
Main Authors 本山, 剛, 沼田, 裕一, 緒方, 康博, 松村, 敏幸, 原田, 栄作, 水政, 豊, 尾池, 雄一, 辻, 武志, 脇田, 富雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1997
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Summary:閉塞性動脈硬化症(ASO)あるいは腹部大動脈瘤(AAA)にしばしば虚血性心疾患が合併し,ASO,AAA症例の予後は合併する虚血性心疾患により左右される.これまで器質的冠狭窄の合併頻度の報告は多いが,冠攣縮の頻度に関する報告は少ない.今回の研究では,手術適応のASO,AAA症例に対してエルゴノビン負荷を含む冠動脈造影を施行し,有意冠狭窄の合併頻度に加え冠攣縮の合併頻度について検討した結果,有意冠狭窄合併率は71例中30例(42.3%)であり,またエルゴノビン負荷陽性率は61例中24例(39.3%)と高率であった.さらに無症候性心筋虚血を71例中16例(22.5%)と高率に認めた.一方,手術適応ASO,AAA症例における虚血性心疾患合併の予測因子を探るためにASO,AAAと7大冠危険因子の関連性を調べた結果,冠狭窄には有意に肥満が関連し,冠攣縮には有意に喫煙歴が関連した.ASO,AAA症例には冠攣縮,無症候性心筋虚血が高率に合併し,ASO,AAA症例の周術期の心事故に結び付く可能性がある.よって,臨床的に冠動脈疾患の存在が疑われない症例でも,手術適応ASO,AAA症例では,冠攣縮誘発試験を含む冠動脈造影を施行し,冠動脈病変を積極的に明らかにする必要がある.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.29.1_25