ノート 心室内血栓の出現,退縮を繰り返す拡張型心筋症の1例
症例は,49歳,拡張型心筋症の男性.43歳の時,脳梗塞にて構音障害をきたしたことがある.1989年2月,心エコーで,左室心尖部に,可動性を有する血栓を2個認めた.MRIで多発性の脳梗塞像を認め,左心室内血栓による多発性の脳塞栓症と推察された.塞栓症再発の危険性が高いと判断し,血栓摘出術を施行した.術後,ワーファリンでトロンボテストを20%前後に維持し,チクロピジン(300mg/日)を併用していたが,1989年4月(血栓摘出術1カ月後),1990年12月,1991年11月の計3回,左室心尖部に血栓の再発を認めた.初回は術直後であり,後の2回は心不全増悪時に出現し,ワーファリン,チクロピジンの量は...
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Published in | 心臓 Vol. 26; no. 1; pp. 90 - 95 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
1994
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Summary: | 症例は,49歳,拡張型心筋症の男性.43歳の時,脳梗塞にて構音障害をきたしたことがある.1989年2月,心エコーで,左室心尖部に,可動性を有する血栓を2個認めた.MRIで多発性の脳梗塞像を認め,左心室内血栓による多発性の脳塞栓症と推察された.塞栓症再発の危険性が高いと判断し,血栓摘出術を施行した.術後,ワーファリンでトロンボテストを20%前後に維持し,チクロピジン(300mg/日)を併用していたが,1989年4月(血栓摘出術1カ月後),1990年12月,1991年11月の計3回,左室心尖部に血栓の再発を認めた.初回は術直後であり,後の2回は心不全増悪時に出現し,ワーファリン,チクロピジンの量は一定であったが,心不全状態の改善とともに血栓は消失した.その間,塞栓症を示唆するエピソードはなく,血栓は自然溶解したと考えられた. 本症例は,心機能低下と血栓形成の関連を示す貴重な症例であり,血栓の再発,消退は心尖部の血流停滞の程度に依存しているものと推察された. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo1969.26.1_90 |