乳がんに対するタモキシフェン維持療法中に発症した上矢状静脈洞血栓症に対し,経静脈的血栓除去術が有効であった1例
乳がん治療に頻用される選択的エストロゲン受容体調整薬のタモキシフェンは血栓塞栓症の副作用で知られる.脳静脈洞血栓症(cerebral venous sinus thrombosis; CVST)は脳梗塞や脳出血を来しうる比較的稀で診断や治療に注意を要する脳卒中の病型である.今回,乳がん治療中にCVSTを発症した一例を報告する.5年間のタモキシフェン治療歴がある48歳女性が頭痛を主訴に近医受診したが,CTで異常を認めなかった.翌日,頭痛の増悪と感覚性失語を認め当院に転院となり,CTで左側頭葉・左後頭葉に皮質下出血を認めた.CVSTも疑われたが診断に辿り着けず,抗凝固薬や外科的介入に経過観察してい...
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Published in | 脳卒中 Vol. 47; no. 4; pp. 262 - 268 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中学会
2025
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Summary: | 乳がん治療に頻用される選択的エストロゲン受容体調整薬のタモキシフェンは血栓塞栓症の副作用で知られる.脳静脈洞血栓症(cerebral venous sinus thrombosis; CVST)は脳梗塞や脳出血を来しうる比較的稀で診断や治療に注意を要する脳卒中の病型である.今回,乳がん治療中にCVSTを発症した一例を報告する.5年間のタモキシフェン治療歴がある48歳女性が頭痛を主訴に近医受診したが,CTで異常を認めなかった.翌日,頭痛の増悪と感覚性失語を認め当院に転院となり,CTで左側頭葉・左後頭葉に皮質下出血を認めた.CVSTも疑われたが診断に辿り着けず,抗凝固薬や外科的介入に経過観察していたが,入院翌日に失語の増悪とD-dimer上昇を認めた.血管造影で上矢状静脈洞閉塞とpseudophlebitic patternを認め,上矢状静脈洞血栓症と診断した.経静脈的血栓除去術による再開通で症状の著明な改善を認めた. |
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ISSN: | 0912-0726 1883-1923 |
DOI: | 10.3995/jstroke.11298 |