雲解像モデルでシミュレーションされた発達期の台風の暖気核発達と気圧低下に関するトラジェクトリー解析

台風の中心気圧は暖気核の発達と眼の領域での質量の発散に関連している。トラジェクトリー解析を用いて、暖気核へ移流する空気塊の起源と眼から流出する空気塊の経路を調べた。まず、高解像度(2km) 雲解像モデルを用いて発達期の台風Wipha(2007)のシミュレーションを行った結果、中心気圧の低下と、眼の上層の暖気核、眼の壁雲、二次循環といった軸対称構造が再現された。このシミュレーション結果を用いて眼の空気塊の後方トラジェクトリー解析を行った結果、暖気核を構成する空気塊は対流圏下層と成層圏下層が起源であることが明らかになった。対流圏下層起源の空気塊は海面からの潜熱フラックスによって相当温位が増加してお...

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Published in気象集誌. 第2輯 Vol. 99; no. 5; pp. 1329 - 1350
Main Authors 日置, 智仁, 坪木, 和久
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本気象学会 2021
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Summary:台風の中心気圧は暖気核の発達と眼の領域での質量の発散に関連している。トラジェクトリー解析を用いて、暖気核へ移流する空気塊の起源と眼から流出する空気塊の経路を調べた。まず、高解像度(2km) 雲解像モデルを用いて発達期の台風Wipha(2007)のシミュレーションを行った結果、中心気圧の低下と、眼の上層の暖気核、眼の壁雲、二次循環といった軸対称構造が再現された。このシミュレーション結果を用いて眼の空気塊の後方トラジェクトリー解析を行った結果、暖気核を構成する空気塊は対流圏下層と成層圏下層が起源であることが明らかになった。対流圏下層起源の空気塊は海面からの潜熱フラックスによって相当温位が増加しており、眼の壁雲で上昇し、対流圏上層で内向きに吹き込んでいる。成層圏下層起源の空気塊は温位が高く、対流圏上層へ下降している。したがって、対流圏下層からの高相当温位の空気塊と成層圏下層からの高温位の空気塊によって構成されている。次に、眼から流出する空気塊の前方トラジェクトリー解析を行った結果、眼の空気塊は対流圏全層から眼の壁雲を通って流出しており、特に高度2km以下及び9kmから12kmからの流出量が多いことが明らかになった。この眼の空気の流出の結果、中心気圧が低下する。
ISSN:0026-1165
2186-9057
DOI:10.2151/jmsj.2021-064