肝膿瘍の併発と同時期に縮小した肺扁平上皮癌の1例

症例は74歳,男性.2013年2月,胆石症の精査中に右肺尖部に5 cm大の腫瘤を指摘され,肺癌が疑われたが気管支鏡検査では悪性所見は認めなかった.4月に行ったFDG-PETにて右肺尖腫瘤に強いFDG集積を認め,同時に肝臓にも強いFDG集積を伴う多発腫瘤を認めた.その直後,熱発,炎症反応・肝酵素上昇を認め,肝膿瘍の診断で抗生剤が投与され肝腫瘤影は消失した.右肺尖部腫瘤は4月のCTで3 cm大に縮小したが,8月には4 cm大に再増大した.気管支鏡検査を繰り返し,悪性所見を認め,9月に右肺上葉切除術を施行した.病理診断は低分化扁平上皮癌だった.本例では肝膿瘍の発症と同時期に肺癌が一時的に縮小し,発見...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 29; no. 5; pp. 662 - 666
Main Authors 吾妻, 寛之, 砥石, 政幸, 江口, 隆, 久米田, 浩孝, 椎名, 隆之, 吉田, 和夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.07.2015
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.29.662

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Summary:症例は74歳,男性.2013年2月,胆石症の精査中に右肺尖部に5 cm大の腫瘤を指摘され,肺癌が疑われたが気管支鏡検査では悪性所見は認めなかった.4月に行ったFDG-PETにて右肺尖腫瘤に強いFDG集積を認め,同時に肝臓にも強いFDG集積を伴う多発腫瘤を認めた.その直後,熱発,炎症反応・肝酵素上昇を認め,肝膿瘍の診断で抗生剤が投与され肝腫瘤影は消失した.右肺尖部腫瘤は4月のCTで3 cm大に縮小したが,8月には4 cm大に再増大した.気管支鏡検査を繰り返し,悪性所見を認め,9月に右肺上葉切除術を施行した.病理診断は低分化扁平上皮癌だった.本例では肝膿瘍の発症と同時期に肺癌が一時的に縮小し,発見から手術までに時間を要した.自然退縮の機序に肝膿瘍に伴う免疫の賦活化が関与したかは不明であるが,肺癌の自然退縮は比較的稀であり肺腫瘤が縮小した場合には慎重な対応が求められる.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.29.662