フルクトースの過剰摂取が活性酸素産生を介して肝細胞に対する不飽和脂肪酸の細胞毒性を増強させる

欧米及びアジア諸国ではメタボリックシンドロームや非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の罹患率が飛躍的に増加している.果糖の過剰摂取はNAFLDの増悪因子とされるが,脂肪毒性における果糖の影響は不明である.本研究は脂肪毒性における果糖の細胞障害機序を解明することを目的とした.果糖の効果は蔗糖添加及び無添加の高脂肪食(HFDS/HFD)を与えたマウスとHepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞株)で評価した.HFDSを与えたマウスは対照群と比較して肝臓の線維化が進展し,ヘムオキシゲナーゼ-1発現も有意に増加した.細胞増殖アッセイで不飽和脂肪酸は果糖添加処理した培養液で培養したHepG2細胞の細胞死を誘発...

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Published in岩手医学雑誌 Vol. 72; no. 3; pp. 89 - 102
Main Authors 米澤, 剛広, 柿坂, 啓介, 鈴木, 悠地, 金沢, 条, 滝川, 康裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 岩手医学会 2020
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Summary:欧米及びアジア諸国ではメタボリックシンドロームや非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の罹患率が飛躍的に増加している.果糖の過剰摂取はNAFLDの増悪因子とされるが,脂肪毒性における果糖の影響は不明である.本研究は脂肪毒性における果糖の細胞障害機序を解明することを目的とした.果糖の効果は蔗糖添加及び無添加の高脂肪食(HFDS/HFD)を与えたマウスとHepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞株)で評価した.HFDSを与えたマウスは対照群と比較して肝臓の線維化が進展し,ヘムオキシゲナーゼ-1発現も有意に増加した.細胞増殖アッセイで不飽和脂肪酸は果糖添加処理した培養液で培養したHepG2細胞の細胞死を誘発した.細胞死はカスパーゼ3の活性化を伴わない経路で誘発され,活性酸素種(ROS)の発生を増加させた.これらはN-アセチルシステイン添加処理を加えると改善した.不飽和脂肪酸は果糖の過剰摂取によりROS産生を介して脂肪毒性を促進する可能性がある.
ISSN:0021-3284
2434-0855
DOI:10.24750/iwateishi.72.3_89