金属イオン添加酸化マグネシウム触媒上でのメタノールによる活性メチルあるいはメチレン化合物のアルケニル化

メタノールをアルケニル化剤とし, カルボニルやシアノなどの官能基を有する化合物から対応する α,β-不飽和化合物を合成する新規の気相不均一触媒反応, RCH2X+CH3OH→M-MgO-H2, -H2OCH2=C-RX (1) (R:H, アルキル) (X: -C=OR', -C=OOR', -C≡N, -C6H5など) を報告するとともに, 反応機構および本反応に有効な金属イオン添加酸化マグネシウム触媒の作用機構について考察した。 通常の含浸法により調製した金属イオン添加MgOを触媒として, 常圧流通反応装置によりアセトンとメタノールとの反応を行った結果を Table 1...

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Published in石油学会誌 Vol. 29; no. 1; pp. 72 - 79
Main Authors 伊香輪, 恒男, 上田, 渉, 横山, 利男, 諸岡, 良彦, 黒川, 秀樹
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 公益社団法人 石油学会 01.01.1986
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ISSN0582-4664
DOI10.1627/jpi1958.29.72

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Summary:メタノールをアルケニル化剤とし, カルボニルやシアノなどの官能基を有する化合物から対応する α,β-不飽和化合物を合成する新規の気相不均一触媒反応, RCH2X+CH3OH→M-MgO-H2, -H2OCH2=C-RX (1) (R:H, アルキル) (X: -C=OR', -C=OOR', -C≡N, -C6H5など) を報告するとともに, 反応機構および本反応に有効な金属イオン添加酸化マグネシウム触媒の作用機構について考察した。 通常の含浸法により調製した金属イオン添加MgOを触媒として, 常圧流通反応装置によりアセトンとメタノールとの反応を行った結果を Table 1に示した。MgO単独では低選択率ながらもメチルビニルケトン (MVK) が生成するが, 副反応であるイソプロピルアルコール (IPA) の生成が顕著であった。IPAは分子間水素移動反応により生成したものと思われる。一方, 金属イオン添加MgO触媒では金属イオンの種類によって幾分反応成績は異なるものの, 活性は高く, メタノールとの反応によるアルケニル化生成物が増加した。特にFe (III) イオンを添加した触媒が最も有効で, MVKおよびその水素化生成物と考えられるメチルエチルケトン (MEK) への選択性が高く, 逐次生成物であるC5-ケトンの生成もみられた。この特徴はFeの添加量の多い触媒ほど顕著であった (Fig. 1)。本反応では逐次反応と生成したMVKの重合を抑えることが重要で, 低い反応温度でかつ接触時間の短い条件でMVKへの高い選択率が得られた (Fig. 2)。 同様の触媒を用いたアセトニトリルとメタノールとの反応では, アセトンに比べ反応速度は低いものの, 高い選択率でアクリロニトリルが生成した (Table 2)。単独のMgOはほとんど活性を示さないが, Fe(III) やCr(III) のイオンを添加すると活性はほぼ100倍にまで増加した。特にCr添加触媒で最も高い選択率 (>90%) を示し, 副生成物として少量のプロピオニトリルが生成するだけであった。また, 活性の経時変化も少なく, 安定性の高い触媒であることがわかった (Fig. 3)。Crイオンの添加量は3wt%前後が最適で, 過剰の添加は表面塩基点を減らすため, 活性は損なわれる (Fig. 4)。なお, 接触時間が長くなると, アセトンの場合と同様, アルケニル化生成物への選択性は減少する (Fig. 5)。 プロピオン酸メチルの反応では, さらに反応性が低下するため, 400°Cで活性試験を行った (Table 3)。各触媒の反応成績はアセトンの場合と同じで, MgO単独では活性は示すもののホモカップリング生成物であるジエチルケトンがほとんどであったが, 金属イオンを添加した触媒, 特にCr-MgOとMn-MgOで活性およびアルケニル化物であるメタクリル酸メチル (MMA) への生成能の高い触媒となることがわかった。Mn添加量を増加させるとMMAの生成量は著しく増加するのに対し, DEKは急激に減少する (Fig. 6)。この反応における接触時間の効果もアセトンの場合とほぼ同じであった (Fig. 7)。 Table 4にメチル水素あるいはメチレン水素のpKaの異なる五種の反応物の反応速度を, Cr-MgOおよびFe-MgOの二つの触媒につき比較した結果を示した。反応速度は反応物のα-水素のpKaが高いものほど遅く, 明らかに両者に相関関係が成り立っている。従って, 本反応では表面塩基点によるα-水素の引き抜き段階が律速で, 生じたアニオン中間体は同じく塩基点でメタノールが脱水素されてできたHCHOと縮合し, 生成物に至ると結論した。ただし, 生成物中にHCHOが検出されないことから, メタノールは完全には脱水素されずに中間状態で表面に吸着した後, 反応に寄与するものと考えた。 触媒間での反応速度の比較から, FeやCrの添加によってα-位の水素引き抜き反応が促進されたことは明らかで, 金属イオンと表面塩基点との協同作用による原因を考えた。つまり, 生成するアニオン中間体がルイス酸性質を示す添加金属イオンに吸着安定化されるため, α-水素のC-H結合の切断が容易になると考えるもので, 金属イオン上での中間体の吸着安定化が転化率や選択性に大きく寄与していると思われる。アセトンやアセトニトリルがメタノールに優先して金属イオンに吸着することは Table 5の事実から明らかである。MgO触媒上でメタノールだけを反応させても分解によるCOやCH4の生成は認められないが, 金属イオン添加触媒では著しい。ところが, メタノールにアセトンなどを共存させると分解は著しく抑えられた。
ISSN:0582-4664
DOI:10.1627/jpi1958.29.72