耐熱性を有するメタン合成用マグネシウムアルミネート担持ニッケル-モリブデン合金触媒
最近, 高い耐熱性を有するメタン合成用触媒の重要性が認識されつつある2)~10)。石炭からの代替天然ガス製造プロセス7)~11)およびメタンを媒体とする原子力エネルギーの利用方法の一つであるケミカルヒートパイプ4)~6)にこの種の触媒を応用する際, 通常の触媒とは異なり650°C以上の高温領域で使用可能なため, システムの総合熱効率の大幅な向上が期待されるためである。 メタン合成反応にはニッケル触媒が活性, 選択性の双方において優れていることが知られているが1), 高温反応時には, 活性金属種であるニッケルの焼結や触媒上への炭素析出による活性劣化が起こりやすいという問題があった2),3)。この...
Saved in:
Published in | 石油学会誌 Vol. 25; no. 2; pp. 87 - 93 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English |
Published |
公益社団法人 石油学会
1982
|
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 最近, 高い耐熱性を有するメタン合成用触媒の重要性が認識されつつある2)~10)。石炭からの代替天然ガス製造プロセス7)~11)およびメタンを媒体とする原子力エネルギーの利用方法の一つであるケミカルヒートパイプ4)~6)にこの種の触媒を応用する際, 通常の触媒とは異なり650°C以上の高温領域で使用可能なため, システムの総合熱効率の大幅な向上が期待されるためである。 メタン合成反応にはニッケル触媒が活性, 選択性の双方において優れていることが知られているが1), 高温反応時には, 活性金属種であるニッケルの焼結や触媒上への炭素析出による活性劣化が起こりやすいという問題があった2),3)。このため, われわれは上記の目的にかなう耐熱性の高い触媒の開発を行ってきた7)~10)。その結果, ニッケル触媒にモリブデンを添加して合金とすることにより耐熱性が飛躍的に増大すること9),10), さらに耐熱性の向上には担体の影響9),10)が大きいことを見い出した。ここでは, 調製法の異なる2種のマグネシウムアルミネート, 3種のマグネシアおよび3種のアルミナに担持させた触媒について比較検討した。 触媒の耐熱性の評価は650°C, 80kg/cm2, GHSV=15,000hr-1の過酷な反応条件下で実際に数日間 (最長12日間) メタン合成反応を行わせ, その間, 定期的に触媒層温度を下げて, 400°Cにおける活性の経時変化を観測することにより行った。 その結果, 2種のマグネシウムアルミネート担持Ni-Mo合金触媒では, Figs. 1および2に示すように, 反応開始後5日目以降, 高く安定な活性を示し, その耐熱性が高いことがわかった。また使用済み触媒の分析の結果, 触媒上への炭素質析出が少ないこと, 反応中にNi-Mo合金を形成しており, そのMo濃度は, 耐熱試験期間中10%と一定であること, Ni-Mo合金の焼結は遅いことなどが明らかになった。一方, 3種のマグネシア担持Ni-Mo触媒ではFig. 3に示すように, 反応初期に低かった活性は, 耐熱試験の進行につれ急激に増加したが, 数日後には低下し耐熱性が低いこと, 触媒中のNi-Mo合金はしだいに消失してNi金属および複合酸化物であるMgO•MoO2に変化すること, Fig. 5に示すように炭素質析出が異常に大きく, そのために触媒層が閉そくしてしまうことなどが明らかとなった。また, 3種のアルミナ担持触媒では, Fig. 4に示すように, アルミナの焼成温度によって耐熱性は大幅に異なるが, いずれも, 程度の違いはあるが, 活性劣化が認められ耐熱性は低いこと, 触媒上への炭素析出量は小さいが, Ni-Mo合金の焼結がより速やかに進行していることなどが明らかになった。 以上の結果をまとめると調製方法の異なるマグネシウムアルミネート, マグネシアおよびアルミナ担体の中では, マグネシウムアルミネートが最もよい耐熱触媒用担体であり, その理由としては, この触媒では炭素質生成が少ないことに加えて, 合金の焼結が進行しにくいことがあげられよう。この事実は次のように説明できる。すなわち, ニッケルアルミネートと金属ニッケルとの間には強い結合力が働いており12), この力が高温においてニッケルの焼結の進行を妨げている7)。ここで, このニッケルアルミネートをスピネルと同じ結晶構造を持ち, かつNi2+とイオン半径のほぼ等しいMg2+を含むマグネシウムアルミネートに置きかえ, さらに活性金属種のニッケルを少量(10%)のモリブデンを含むNi-Mo合金に置きかえると, ニッケルアルミネート-ニッケル系はマグネシウムアルミネート担持Ni-Mo合金触媒と見なすことができるが, このマグネシウムアルミネートとNi-Mo合金間に働いていると考えられる強い結合力がNi-Mo合金の焼結を抑制している。 |
---|---|
ISSN: | 0582-4664 |
DOI: | 10.1627/jpi1958.25.87 |