児童生徒の分類能力の調査研究(1)一生物の分類概念を中心として一
発達心理学者ピアジェは、子供の知能の発達過程を研究するために多くの独創的な課題を開発している。その中の一つに包摂(包括)課題と呼ばれるものがある。これは、ある一つの類概念(分類概念)の外延は、その下位概念の総てを包含することである。本研究は、この包摂課題を生物の分類学習に応用した問題を幾つか作成し、小・中学生に課して分類能力の定着度を調査したものである。その主な結果は次の通りである。(1) 調査対象となった小学生では、包括問題が要求する動物の基礎的分類能力は大変低く、殆ど無いに等しい。(2) 生物の分類を学習している中学1、2年生でも高々40%しか包摂課題に正しく答えられない。しかも2年生の正...
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Published in | 日本理科教育学会研究紀要 Vol. 30; no. 2; pp. 9 - 19 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本理科教育学会
1989
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0389-9039 2433-0140 |
DOI | 10.11639/formersjst.30.2_9 |
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Summary: | 発達心理学者ピアジェは、子供の知能の発達過程を研究するために多くの独創的な課題を開発している。その中の一つに包摂(包括)課題と呼ばれるものがある。これは、ある一つの類概念(分類概念)の外延は、その下位概念の総てを包含することである。本研究は、この包摂課題を生物の分類学習に応用した問題を幾つか作成し、小・中学生に課して分類能力の定着度を調査したものである。その主な結果は次の通りである。(1) 調査対象となった小学生では、包括問題が要求する動物の基礎的分類能力は大変低く、殆ど無いに等しい。(2) 生物の分類を学習している中学1、2年生でも高々40%しか包摂課題に正しく答えられない。しかも2年生の正答率が1年生の1/2~1/3と低い。(3) これらの事実から、作成した生物の分類概念の包括課題の問題は、分類概念の定着度を評価する上で有用な手段であることが判明した。(4) 以上の結果や個々の問題の応答結果は、小・中学校の生物学習のカリキュラムや指導法に多くの示唆を与えているように思われる。 |
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ISSN: | 0389-9039 2433-0140 |
DOI: | 10.11639/formersjst.30.2_9 |