アルカリ土類金属およびアルカリ金属化合物を添加したMgOによるベンゼンの接触水蒸気ガス化

炭化水素の接触ガス化反応におけるアルカリ, アルカリ土類金属種の触媒作用を理解するため, ベンゼンのガス化反応を行った。特に水蒸気のガス化剤としての特性をCO2と比較した。 MgO(BE)を触媒としたときのベンゼン-水蒸気反応の反応温度依存性をFig. 1に示す。ベンゼン-CO2反応10)と同様にベンゼンの分解反応による反応中間体の生成が起こる973K以上でベンゼン-水蒸気反応が進行した。従来の結果1)~5),8)~12)とも併せて, ベンゼン-水蒸気反応は反応中間体としての炭素を生成するベンゼンの分解およびそれに続く炭素のガス化によって進行すると考えられる。 Table 1にはベンゼン-CO...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in石油学会誌 Vol. 34; no. 1; pp. 44 - 52
Main Authors 松方, 正彦, 小林, 健一郎, 菊地, 英一, 森田, 義郎
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 公益社団法人 石油学会 01.01.1991
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:炭化水素の接触ガス化反応におけるアルカリ, アルカリ土類金属種の触媒作用を理解するため, ベンゼンのガス化反応を行った。特に水蒸気のガス化剤としての特性をCO2と比較した。 MgO(BE)を触媒としたときのベンゼン-水蒸気反応の反応温度依存性をFig. 1に示す。ベンゼン-CO2反応10)と同様にベンゼンの分解反応による反応中間体の生成が起こる973K以上でベンゼン-水蒸気反応が進行した。従来の結果1)~5),8)~12)とも併せて, ベンゼン-水蒸気反応は反応中間体としての炭素を生成するベンゼンの分解およびそれに続く炭素のガス化によって進行すると考えられる。 Table 1にはベンゼン-CO2および-水蒸気反応における活性, 選択性を示した。ガス化剤の分圧が24kPaにおける結果を比較すると, アルカリ土類酸化物をMgO(BG)に担持した触媒を用いることによりベンゼン-CO2反応において高い活性が得られており, MgO(BG)を除くアルカリ土類酸化物触媒ではベンゼン-CO2反応に比べ, ベンゼン-水蒸気反応の方が活性は低い。また活性序列も両ガス化剤で一異なっていた。 K2O/MgOの場合にはいずれのガス化剤を用いても同様な活性を示したが, ベンゼン-水蒸気反応の方が選択性に優れていた。 ベンゼン-水蒸気反応の方が活性が低いのは水蒸気による触媒のシンタリングによるのではないかと考え, 反応前後の触媒の表面積を比較した (Table 2)。しかし, 活性の違いを説明するような相違は得られなかった。Table 1には活性, 選択性に対する水蒸気分圧の影響を併せて示してある。いずれのアルカリ土類酸化物触媒においても水蒸気分圧の増加により反応したベンゼン量は減少したことから, ベンゼンの分解による反応中間体の生成を触媒に吸着した水蒸気が抑制するものと考えた。 反応中間体としての析出炭素のガス化における触媒特性を検討するために, いったん触媒上に析出させた炭素のCO2, 水蒸気ガス化を行った (Fig. 5)。MgO(BE) とCaO/MgOでは水蒸気とCO2との間にガス化速度の違いはみられなかったが, その他の触媒 (SrO/BaO, BaO/MgO, K2O/MgO) では水蒸気ガス化の方が高いガス化速度が得られた。前者の場合にはMgO表面上の酸素種の移動, すなわち活性点から析出炭素表面への酸素種のスピルオーバー現象が律速過程を含んでいるためガス化剤によるガス化速度の違いがみられなかったものと考えた。一方, 後者の場合にはMgO表面から担持した活性種が離れて析出炭素層へ移動し, 活性点と炭素表面の緊密な接触が常に保たれるため, MgO表面における酸素種のスピルオーバーが必要なく, 上記の結果が得られたと推察した。 MgOおよびアルカリ土類酸化物担持MgO触媒への水蒸気の吸着活性を検討するため, 吸着水のTPDスペクトルを測定した結果をFig. 6に示す。脱離量の序列はFig. 5に示した析出炭素の水蒸気ガス化速度の序列と一致した。よって, 強く吸着した水蒸気が反応中間体の炭素をガス化するものと考えた。さらに, Table 1から求めた反応したベンゼン量の序列も脱離量の序列と一致することから, 強く吸着した水蒸気は反応中間体の炭素をガス化すると共に, ベンゼンの分解による反応中間体の生成を抑制するものと考えた。すなわち, ベンゼン-水蒸気反応における触媒作用を説明する上で, ベンゼンの分解に対する水蒸気の抑制効果の大きさと, 析出炭素のガス化における触媒活性の二つの因子が重要と考えられる。
ISSN:0582-4664
DOI:10.1627/jpi1958.34.44