黄芩含有の2種の漢方薬により薬剤性膀胱炎を発症した1例

2種の漢方薬で繰り返し薬剤性膀胱炎を生じた症例を経験したので文献的考察を含めて報告する。55才時に体重増加に対して防風通聖散を処方され,約1ヵ月後に排尿痛などが生じ近医泌尿器科を受診し,膀胱炎として抗菌剤を処方された。約1ヵ月間治療しても治癒しないため総合病院の泌尿器科に紹介され,使用中の全薬剤を中止したところ2週間以内に症状と尿所見が改善した。防風通聖散再開後,数日で膀胱炎症状が再燃した。4ヵ月後,更年期障害に対して女神散を使用したところ膀胱炎様症状が再燃した。以上から防風通聖散と女神散による薬剤性膀胱炎と診断された。この2種と過去に使用した漢方薬の構成生薬の検討により黄芩が原因生薬と考えら...

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Published in日本東洋医学雑誌 Vol. 74; no. 4; pp. 331 - 337
Main Authors 松井, 彰, 田中, 國晃, 山本, 真一, 長船, 綾子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本東洋医学会 2023
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ISSN0287-4857
1882-756X
DOI10.3937/kampomed.74.331

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Summary:2種の漢方薬で繰り返し薬剤性膀胱炎を生じた症例を経験したので文献的考察を含めて報告する。55才時に体重増加に対して防風通聖散を処方され,約1ヵ月後に排尿痛などが生じ近医泌尿器科を受診し,膀胱炎として抗菌剤を処方された。約1ヵ月間治療しても治癒しないため総合病院の泌尿器科に紹介され,使用中の全薬剤を中止したところ2週間以内に症状と尿所見が改善した。防風通聖散再開後,数日で膀胱炎症状が再燃した。4ヵ月後,更年期障害に対して女神散を使用したところ膀胱炎様症状が再燃した。以上から防風通聖散と女神散による薬剤性膀胱炎と診断された。この2種と過去に使用した漢方薬の構成生薬の検討により黄芩が原因生薬と考えられた。漢方薬による薬剤性膀胱炎は一般に発症まで長期間を要し,原因薬剤の中止により比較的短期間で軽快する。原因生薬として黄芩を示唆する文献が多い。長期の処方に際しては十分な注意が必要であると考える。
ISSN:0287-4857
1882-756X
DOI:10.3937/kampomed.74.331