ダーウィンフィンチの起源と系統関係

種はしばしば,様々な環境条件のもとでそれぞれ形態学的に分化し適応したグループを比較的短期間のうちに一挙に生じる.この現象を適応放散という.最もよく知られている適応放散の例は,ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ類である.ダーウィンフィンチと呼ばれる一群の鳥は,ガラパゴス諸島に14種,ココス島に1種が棲息する.DNA 塩基配列の変異を比較した研究により,15種すべてが300万年は越えない過去にただひとつの祖先集団から分岐したことが示された.また,ダーウィンフィンチ類に最も近縁の現存種は南アメリカと中央アメリカに棲息している dull-colored grassquit(Tiaris obscura...

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Published in化石研究会会誌 Vol. 38; no. 1; pp. 57 - 62
Main Author 佐藤 秋絵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 化石研究会 29.07.2005
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ISSN0387-1924
2759-159X
DOI10.60339/kasekiken.38.1_57

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Summary:種はしばしば,様々な環境条件のもとでそれぞれ形態学的に分化し適応したグループを比較的短期間のうちに一挙に生じる.この現象を適応放散という.最もよく知られている適応放散の例は,ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ類である.ダーウィンフィンチと呼ばれる一群の鳥は,ガラパゴス諸島に14種,ココス島に1種が棲息する.DNA 塩基配列の変異を比較した研究により,15種すべてが300万年は越えない過去にただひとつの祖先集団から分岐したことが示された.また,ダーウィンフィンチ類に最も近縁の現存種は南アメリカと中央アメリカに棲息している dull-colored grassquit(Tiaris obscura)であると同定された.ダーウィンフィンチ類の祖先はただ1種であり,ガラパゴス諸島へ1000Km以上の距離を飛行して棲み着き,異なった島に棲み分け,主に嘴の大きさや形を変えながらそれぞれ違った食物に適応していった.ダーウィンフィンチ類の主要なグループ内では,種は DNA 塩基配列の変異では区別がつかないことから,このグループでは種分化がまだ進行中であることがうかがえる.
ISSN:0387-1924
2759-159X
DOI:10.60339/kasekiken.38.1_57