食塩中の塩化物の定量

硝酸水銀滴定法 (ISO 2481), 電位差滴定法 (ISO 6227), および硝酸銀滴定法 (日本専売公社法) による食塩中の塩化物イオンの定量について, 操作, 精度, 所要時間, コストなどの面から比較検討した. 硝酸水銀滴定法は検液のpHとジフェニルカルバゾンの添加量によって影響された. 硝酸添加量は過剰になるとブランク値を増加させ, また色調の不安定を生ずるし, 不足すると定量値が低くなるから, 2N硝酸添加量0.5~1.0mlとし検液を約pH2にすると適当であった. ジフェニルカルバゾンの添加量によって終点の色調は変化するが, 定量の精度に影響しなかった. なお硝酸水銀滴定法の...

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Published in日本海水学会誌 Vol. 39; no. 3; pp. 136 - 143
Main Authors 新野, 靖, 清水, 典子, 西村, ひとみ, 尾方, 昇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海水学会 1985
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ISSN0369-4550
2185-9213
DOI10.11457/swsj1965.39.136

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Summary:硝酸水銀滴定法 (ISO 2481), 電位差滴定法 (ISO 6227), および硝酸銀滴定法 (日本専売公社法) による食塩中の塩化物イオンの定量について, 操作, 精度, 所要時間, コストなどの面から比較検討した. 硝酸水銀滴定法は検液のpHとジフェニルカルバゾンの添加量によって影響された. 硝酸添加量は過剰になるとブランク値を増加させ, また色調の不安定を生ずるし, 不足すると定量値が低くなるから, 2N硝酸添加量0.5~1.0mlとし検液を約pH2にすると適当であった. ジフェニルカルバゾンの添加量によって終点の色調は変化するが, 定量の精度に影響しなかった. なお硝酸水銀滴定法の欠点は終点色調と終点判定用基準液の色調が一致せず, また終点の色調が不安定で分析者にしばしば不安感を与える点にある. 電位差滴定法は規定されている6種の電極の組合せでは相互に繰返し精度の差は認められなかったが, 正確さについては銀イオン選択電極とカロメル電極の組合せで比較的よい結果をえた. 滴定の繰返し精度は, 1: 電位差滴定法, 2: 硝酸銀滴定法, 3: 硝酸水銀滴定法の順に良好な結果をえた. しかし定量の全操作を通じての標準偏差はいずれもほぼ同一になった. これは希釈誤差が滴定誤差より大きいためと考えられる. 各方法の正確さは国際標準海水の基準値からの片寄りによって比較した. その結果硝酸銀滴定法が最も正確であり, 硝酸水銀滴定法はやや低い値を示し, 電位差滴定法はやや高い値を示した. 概略の分析所要時間は検液採取後で, 硝酸水銀滴定法25分, 電位差滴定法30分, 硝酸銀滴定法20分となった. 試薬コスト, 装置コスト, 人件費を試算したが人件費が試薬コストおよび装置コストより高いために試薬が高価な硝酸銀滴定法のほうが試薬の安い硝酸水銀滴定法よりむしろ全コストとしては安くなった.
ISSN:0369-4550
2185-9213
DOI:10.11457/swsj1965.39.136