長崎県福江島における有機硝酸の濃度変動―輸送時間と大気寿命の関係
長崎県福江島に位置する「大学研究機関共同利用 福江島大気観測施設」にて、2022年2–5月に有機硝酸の連続観測を行った。先行研究で開発した熱分解–キャビティ減衰位相シフト分光法を用いて有機硝酸の濃度測定を行った。観測期間中におけるPNs(ROONO2:Rは有機骨格)、ONs(RONO2)の平均濃度はそれぞれ0.44±0.33、0.26±0.14 ppbv(1σ)であった。また、PNsは昼間に高く、夜間に低い日内変動を示した一方、ONsは規則的な日内変動を示さなかった。福江島に到達する気塊を、後方流跡線解析を用いて、ロシア、中国北部(NC)、韓国、中国北部・韓国(NC+KR)、中国南部、日本、海...
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Published in | 大気環境学会誌 Vol. 59; no. 1; pp. 1 - 7 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 大気環境学会
15.12.2023
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Subjects | |
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ISSN | 1341-4178 2185-4335 |
DOI | 10.11298/taiki.59.1 |
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Summary: | 長崎県福江島に位置する「大学研究機関共同利用 福江島大気観測施設」にて、2022年2–5月に有機硝酸の連続観測を行った。先行研究で開発した熱分解–キャビティ減衰位相シフト分光法を用いて有機硝酸の濃度測定を行った。観測期間中におけるPNs(ROONO2:Rは有機骨格)、ONs(RONO2)の平均濃度はそれぞれ0.44±0.33、0.26±0.14 ppbv(1σ)であった。また、PNsは昼間に高く、夜間に低い日内変動を示した一方、ONsは規則的な日内変動を示さなかった。福江島に到達する気塊を、後方流跡線解析を用いて、ロシア、中国北部(NC)、韓国、中国北部・韓国(NC+KR)、中国南部、日本、海由来に分類し、それぞれの気塊由来における濃度変動を調べた。2、3月はPNs、ONsともにNC由来が最も高い濃度であったが、4、5月になるとNC由来の濃度は大きく減少し、NC+KR由来が最も高い濃度であった。このような濃度変動となった原因として、大気寿命と大陸から福江島への輸送時間の関係が挙げられる。具体的には、4、5月のNC由来の気塊では輸送時間がPNsの大気寿命よりも長く、大陸で生成したPNsの大部分が福江島に到達するまでに消失する一方、NC+KR由来ではNC由来より輸送時間が短く、輸送過程におけるPNsの消失割合が低かったと考えられる。 |
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ISSN: | 1341-4178 2185-4335 |
DOI: | 10.11298/taiki.59.1 |