老年者胃癌, 胃潰瘍手術に於ける心電図変化と輸血量の関係

老年者胃癌59例, 胃潰瘍19例について胃切除術前後の心電図変化と輸血量との関係を検討した. 胃癌では術後心電図で心筋梗塞様心電図8.5%, 高度虚血性変化10.2%, 軽度虚血性変化8.5%, 非特異的ST, T変化18.6%, 不変54.2%であり, 胃潰瘍ではそれぞれ5.3%, 21.0%, 15.8%, 15.8%, 42.1%に見られ, 両疾患群に差を認めなかった. 手術時輸血量が1,000ml以上のものに梗塞様または虚血性心電図変化が多く, 胃癌では大量輸血例の45.5%, 胃潰瘍では71.4%に梗塞様または虚血性変化を認めた. 手術後のヘマトクリット上昇度は心電図変化の著明な群に...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 14; no. 4; pp. 245 - 252
Main Authors 蔵本, 築, 金沢, 暁太郎, 松下, 哲, 村上, 元孝, 桑子, 賢司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.07.1977
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Summary:老年者胃癌59例, 胃潰瘍19例について胃切除術前後の心電図変化と輸血量との関係を検討した. 胃癌では術後心電図で心筋梗塞様心電図8.5%, 高度虚血性変化10.2%, 軽度虚血性変化8.5%, 非特異的ST, T変化18.6%, 不変54.2%であり, 胃潰瘍ではそれぞれ5.3%, 21.0%, 15.8%, 15.8%, 42.1%に見られ, 両疾患群に差を認めなかった. 手術時輸血量が1,000ml以上のものに梗塞様または虚血性心電図変化が多く, 胃癌では大量輸血例の45.5%, 胃潰瘍では71.4%に梗塞様または虚血性変化を認めた. 手術後のヘマトクリット上昇度は心電図変化の著明な群に高く, 胃癌では梗塞様変化群15.7, 高度虚血群10.5, 軽度虚血群8.4の上昇を示し, 胃潰瘍ではそれぞれ9.0, 13.5, 5.3の上昇を示した. GOTは各群とも正常範囲の変動であり, LDHは軽度上昇を示した. 手術時間は各群間に差を認めず心電図変化との関係は認められないが, 梗塞様及び虚血性変化群には救急手術が多く認められた. 術後経過観察中死亡した症例は胃癌18例, 胃潰瘍7例であり, 梗塞様変化, 高度虚血群に予後不良のものが多い. しかし手術前後の心電図変化と冠動脈狭窄指数の間には相関は認められなかった. 心電図変化の機序として冠硬化は考え難く, poor risk の患者に大量の輸血によりヘマトクリット及び血液粘度の急上昇を来たし冠微少循環における血流障害を惹起したものと考えた.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.14.245