老年者における血中リポ蛋白 (a) 濃度の臨床的意義 血管合併症, 予後の検討

老年者における血中リポ蛋白 (a) [Lp(a)] 濃度の意義を明らかにする目的で, 老年受診者をLp (a) 濃度によって35mg/dl以上の高値群と20mg/dl未満の低値群に分類し (各々48例, 97例), その臨床所見, 予後を比較検討した. 臨床所見は既往歴, 血管性危険因子 (高血圧, 糖尿病, 高脂血症, 喫煙) および血管合併症 [頭部CT検査, 頸動脈超音波断層検査 (US), 心電図検査, ankle pressure index (API) で評価] の有無を検索し, 予後は5年間追跡期間中の生存分析, 死因および血管性事故 (脳卒中や心筋梗塞の発症, ASOの病期進行...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 36; no. 8; pp. 535 - 541
Main Authors 岩本, 俊彦, 小泉, 純子, 杉山, 壮, 阿美, 宗伯, 清水, 武志, 田中, 由利子, 高崎, 優
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.08.1999
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Summary:老年者における血中リポ蛋白 (a) [Lp(a)] 濃度の意義を明らかにする目的で, 老年受診者をLp (a) 濃度によって35mg/dl以上の高値群と20mg/dl未満の低値群に分類し (各々48例, 97例), その臨床所見, 予後を比較検討した. 臨床所見は既往歴, 血管性危険因子 (高血圧, 糖尿病, 高脂血症, 喫煙) および血管合併症 [頭部CT検査, 頸動脈超音波断層検査 (US), 心電図検査, ankle pressure index (API) で評価] の有無を検索し, 予後は5年間追跡期間中の生存分析, 死因および血管性事故 (脳卒中や心筋梗塞の発症, ASOの病期進行, 大動脈瘤の発現) の有無を検討した. 両群の背景因子で年齢, 性別に差はみられず, 高値群で脳卒中の既往が多い傾向を示した. また, 高値群 (vs. 低値群) ではCT異常, US異常が各々73% (vs. 54%), 83% (vs. 51%) と有意に多く, API低値が多い傾向を示していた. 死亡例は高値群で18例 (vs. 21例) あり, 年間死亡率は9.4% (vs. 4.8%), log-rank 検定 (統計量4.70, p=0.0301) で低値群との間に有意差を認めた. 生命予後に対する Cox ハザード比では年齢(2.70), CT異常 (2.62), Lp (a) 高値 (2.69) が有意に高かった. 死因の61%は肺炎で, このうち脳卒中によると思われる嚥下性肺炎は64%にみられた. 血管合併症も5年間で10例 (vs. 8例) みられ, 年間発症率は5.5% (vs. 1.8%) と高く, このうち7例が脳梗塞であった. 以上より, Lp (a) 濃度が遺伝的に規定されていることから, Lp (a) に対する暴露時間は年齢に比例し, 老年者ではLp (a) 高値によって血管病変が進展した結果, 循環障害が顕性化するものと考えられた. したがって, Lp (a) 高値は老年者において予後不良な因子であることが示された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.36.535