介護老人保健施設在所者の家庭復帰へ影響する要因 介護者の在宅受け入れへの意向に影響する要因より
目的: 介護保険制度が施行され5年が経過したが, 施設入所を希望する者は年々増加している.介護保険制度の基本理念は在宅での「自立支援」や「自己決定」であるにも関わらず, 入所や在宅復帰の決定は介護者の意向が強く反映されており, 在宅へ復帰する割合は年々低下している. 本研究では, 介護老人保健施設 (老健施設) に在所中の高齢者の介護者に在宅への受け入れの意向を調査し, その意向へ影響する要因を検討することを目的とした. 方法: 平成16年6月末に茨城県M市の介護老人保健施設に在所中の高齢者88名とその介護者を対象とした. 本人には面接調査を実施, 介護者へは郵送法によるアンケート調査を実施し...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 43; no. 1; pp. 108 - 116 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.01.2006
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.43.108 |
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Summary: | 目的: 介護保険制度が施行され5年が経過したが, 施設入所を希望する者は年々増加している.介護保険制度の基本理念は在宅での「自立支援」や「自己決定」であるにも関わらず, 入所や在宅復帰の決定は介護者の意向が強く反映されており, 在宅へ復帰する割合は年々低下している. 本研究では, 介護老人保健施設 (老健施設) に在所中の高齢者の介護者に在宅への受け入れの意向を調査し, その意向へ影響する要因を検討することを目的とした. 方法: 平成16年6月末に茨城県M市の介護老人保健施設に在所中の高齢者88名とその介護者を対象とした. 本人には面接調査を実施, 介護者へは郵送法によるアンケート調査を実施した. 入所時の情報は施設から収集した. 結果: 在所者79名, 介護者58名が分析対象であった. 家庭復帰を希望した在所者で, その介護者が在宅へ受け入れる意向がある者は34.6%と低く, 本人と介護者の意向に差がみられた. 介護者の在宅への受け入れ意向を困難とする要因 (オッズ比 (OR), 95%CI)は, (1)家族の協力が無い (OR: 15.37, 2.05~115.24), (2)問題行動が1個以上ある (OR: 8.34, 1.02~68.05),(3)ベッド上で寝て過ごす時間の長さ (OR: 1.31, 1.01~1.71), (4)介護保険制度の知識が無い (OR: 3.65, 0.81~16.38) であった. 結論: 在所者がベッド上で過ごす時間が増加すると, 介護者の在宅受け入れが困難になることから, 施設内での身体活動を活発にし生活機能を維持する必要が示唆された. 問題行動は受け入れに影響することから, 認知症高齢者や家族を支援する地域でのケアシステムを早急に確立することが重要と思われた. また, 他の家族の協力が無いことや介護保険制度の知識が不十分だと受け入れが困難となる危険性が高まるため, 病院退院時や施設入所時に介護保険制度の情報を提供し, 制度の利用方法について啓蒙活動をする必要があることが示唆された. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.43.108 |