老人の身体的移動能力と関連要因についての疫学的検討
長寿地域とされる沖縄県O村における老人健康調査の中から, 本報では活力のある老人の多いこの地域の特徴に注目し, 身体的移動能力の高さに寄与する関連要因について疫学的検討を行ったので報告する. 研究対象は, 沖縄県O村に存在する65歳以上の老人756人である. 身体的移動能力の高さに関連する要因の検討対象として, 性別, 年齢, 喫煙状況, 仕事, 飲酒, 医学的指標 (高血圧, ケトレー指数, 皮下脂肪厚, 握力, 血清アルブミン, 血清総コレステロール, 血色素), 食品摂取頻度を採用した. 統計的解析方法としては, 身体的移動能力を目的変数とし, 関連要因検討項目を説明変数として多重ロジス...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 28; no. 6; pp. 768 - 772 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.11.1991
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Subjects | |
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Summary: | 長寿地域とされる沖縄県O村における老人健康調査の中から, 本報では活力のある老人の多いこの地域の特徴に注目し, 身体的移動能力の高さに寄与する関連要因について疫学的検討を行ったので報告する. 研究対象は, 沖縄県O村に存在する65歳以上の老人756人である. 身体的移動能力の高さに関連する要因の検討対象として, 性別, 年齢, 喫煙状況, 仕事, 飲酒, 医学的指標 (高血圧, ケトレー指数, 皮下脂肪厚, 握力, 血清アルブミン, 血清総コレステロール, 血色素), 食品摂取頻度を採用した. 統計的解析方法としては, 身体的移動能力を目的変数とし, 関連要因検討項目を説明変数として多重ロジスティック回帰分析を用いた. 医学的指標のうち, 連続量については, 平均値±標準偏差によって3段階に分類した. 身体的活動能力の高さに効果をもった項目として年齢の低い群, 仕事への従事群, 食品摂取頻度の高い群の中では魚類, 卵, 緑黄色野菜, 医学的指標としては皮下脂肪厚が高い群, 握力の大きい群, 血清アルブミン値の高い群が認められた. 食品摂取頻度のうち肉類については摂取頻度の高い群のオッズ比が1.86と高い傾向を示したが, 統計的有意差は出なかった. 喫煙の影響は, 喫煙量が増加するとオッズ比の低下する傾向はあるものの, 統計的有意差は認めなかった. 飲酒についても飲酒の有無で差は認められなかった. 沖縄の老人の食生活や労働の特徴については, いくつかの報告がなされているが, 動物性食品と植物性食品のバランスが良いことや1年中農作業に従事出来ることなどが長寿の要因として推測されている. 本報の分析結果は, 身体的移動能力の高さにもこれらの生活習慣が寄与していることを示唆しているものと考えられる. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.28.768 |