社会的活動性の異なる健常老人の主観的幸福感と抑うつ症状

65歳以上の社会活動性の比較的低い老人ホーム在住健常老人26人 (77.2±6.0歳) と社会活動性の高い在宅健常老人47人 (75.6±5.1歳) を対象に, 主観的幸福感および抑うつ状態について比較検討を行った. 主観的幸福感の測定尺度としては, モラールスケールを, 抑うつ状態の尺度には Zung の自己評価式抑うつ尺度 (SDS) を用いた. モラールスケールの総得点では, 老人ホーム在住健常老人では, 7.8±4.2点, 在宅健常老人では, 12.7±3.4点であり, 在宅健常老人のほうが, 有意に高い主観的幸福感を示していた. さらに, 各項目別にみてみると, 特に自分の老化につい...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 30; no. 8; pp. 693 - 697
Main Authors 山下, 一也, 小林, 祥泰, 山口, 修平, 小出, 博己, 今岡, かおる, 卜蔵, 浩和, 須山, 信夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.08.1993
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Summary:65歳以上の社会活動性の比較的低い老人ホーム在住健常老人26人 (77.2±6.0歳) と社会活動性の高い在宅健常老人47人 (75.6±5.1歳) を対象に, 主観的幸福感および抑うつ状態について比較検討を行った. 主観的幸福感の測定尺度としては, モラールスケールを, 抑うつ状態の尺度には Zung の自己評価式抑うつ尺度 (SDS) を用いた. モラールスケールの総得点では, 老人ホーム在住健常老人では, 7.8±4.2点, 在宅健常老人では, 12.7±3.4点であり, 在宅健常老人のほうが, 有意に高い主観的幸福感を示していた. さらに, 各項目別にみてみると, 特に自分の老化についての態度にかかわる因子では有意差が認められた. SDSは老人ホーム在住健常老人は35.6±9.8点, 在宅健常老人は28.2±5.4点と老人ホーム在住健常老人のほうが有意に高かった. さらに, SDS 48点以上の中等度以上の抑うつ状態の人の比率をみると老人ホーム在住健常老人では26人中3人 (11.5%) と, 在宅健常老人の47人中0人に比して, 有意に高率であった. また, SDSとモラール得点との関係では, 有意の負相関がみられた. 以上より, 社会的活動性が人生の満足度や精神的な健康に大きな影響を与えることが示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.30.693