初発脳血栓の長期予後とMR画像 生命予後
脳血栓症の長期予後を検討し, MRI所見から生命予後を予測しうる因子があるかどうかを知る目的で, 発症3カ月以上生存した初発脳血栓103例 (60歳以上) を5年間追跡調査した. このうち解析対象となった98例 (T群) の平均年齢は73.1歳, 男65例, 女33例であった. 年齢を調整した対照には脳血栓の既往がなく, 高血圧もしくは糖尿病を有する65例 (R群) といずれもない85例 (N群) を用いた. MRI所見は, 1) 梗塞の型 (穿通枝系, 皮質枝系, 脳幹・小脳系), 2) PVHの程度 (none, rims/caps, patchy, diffuse), 3) 深部点状病変...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 36; no. 2; pp. 128 - 135 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.02.1999
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.36.128 |
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Summary: | 脳血栓症の長期予後を検討し, MRI所見から生命予後を予測しうる因子があるかどうかを知る目的で, 発症3カ月以上生存した初発脳血栓103例 (60歳以上) を5年間追跡調査した. このうち解析対象となった98例 (T群) の平均年齢は73.1歳, 男65例, 女33例であった. 年齢を調整した対照には脳血栓の既往がなく, 高血圧もしくは糖尿病を有する65例 (R群) といずれもない85例 (N群) を用いた. MRI所見は, 1) 梗塞の型 (穿通枝系, 皮質枝系, 脳幹・小脳系), 2) PVHの程度 (none, rims/caps, patchy, diffuse), 3) 深部点状病変の数, 4) 無症候性脳梗塞の有無, 5) 脳室拡大の有無, 6) 皮質萎縮の程度を評価し, また危険因子, 痴呆の有無, 退院時の日常生活動作能力 (ADL) の程度を比較検討した. T群では穿通枝系, 皮質枝系および脳幹・小脳系梗塞が各々46例, 36例, 16例みられ, 運動障害が84例, 痴呆が44例, ADL全介助が22例あった. T群の死亡例数は33例 (累積死亡率33.7%, 年間死亡率8.2%) と多く, 5年生存率は log-rank 検定で他の2群との間に有意差を認めた. 脳卒中再発例 (年間再発率4.0%) も多かったが直接死因とはならず, 死因の2/3は嚥下性肺炎, 窒息による気道事故であった. これらの死亡を従属変数とする Cox ハザードモデルでは, ハザード比 (8.87) が血栓例で有意に高かった. T群において死亡群と生存群を比較すると, 死亡群では痴呆例, ADL全介助例, 皮質萎縮が多く, 一方, MR像では小血管病変を示唆する所見 (穿通枝系梗塞, patchy PVH) が少なかった. 以上から, 脳血栓症慢性期例では気道事故による死亡が有意に増加し, 特に痴呆例, ADL全介助例では球麻痺等によると思われる誤嚥に注意する必要があると考えられた. MR所見からは血栓症以外に生命予後を予知しうる有意な因子は抽出できなかったが, 画像でみられた小血管病変の生命予後は比較的良いことが窺われた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.36.128 |