百寿者の頸動脈超音波断層所見-成人健常者例との対比からみた動脈壁の加齢変化 Tokyo Centenarian Study 3

動脈壁の加齢変化について検討するため, ヒトの限界寿命に近接した年齢と考えられる百寿者の頸動脈超音波断層検査を行い, 成人健常対照群における所見と比較した. 対象は, 東京都内在住25名 (男性8名, 女性17名) の百寿者で, 超音波断層装置にて, 非プラーク部の内中膜肥厚度と, プラークの有無について観察した. これらの所見を同じ東京都在住の人間ドック受診者である, 高血圧, 糖尿病のない健常成人の対照群 (男性83名, 女性43名, 28~82歳) の所見と比較した. 百寿者群では, 全般に頸動脈のびまん性の肥厚化が認められ, 両側の分岐部と総頸動脈3定点における非プラーク部の内中膜厚の...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 34; no. 2; pp. 139 - 146
Main Authors 本間, 聡起, 石田, 浩之, 長谷川, 浩, 広瀬, 信義, 中村, 芳郎, 大熊, 潔, 石井, 壽晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.02.1997
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Summary:動脈壁の加齢変化について検討するため, ヒトの限界寿命に近接した年齢と考えられる百寿者の頸動脈超音波断層検査を行い, 成人健常対照群における所見と比較した. 対象は, 東京都内在住25名 (男性8名, 女性17名) の百寿者で, 超音波断層装置にて, 非プラーク部の内中膜肥厚度と, プラークの有無について観察した. これらの所見を同じ東京都在住の人間ドック受診者である, 高血圧, 糖尿病のない健常成人の対照群 (男性83名, 女性43名, 28~82歳) の所見と比較した. 百寿者群では, 全般に頸動脈のびまん性の肥厚化が認められ, 両側の分岐部と総頸動脈3定点における非プラーク部の内中膜厚の平均値は, 0.91から1.12mmであった. これらの厚さと血圧値, 血清脂質値との相関は認めなかった. 対照群における総頸動脈の3定点の平均内中膜厚は, 男女, 左右とも, 加齢によって増加しており, この相関は二次関数曲線に近似した. これらの回帰式から算出した百寿者における総頸動脈の平均内中膜厚の期待値は, 男女左右で0.92から0.98mmであり, 百寿者の実測値である0.95から1.05mmとほぼ一致した. しかし, 百寿者では, 対照群に比べて内中膜厚の値のばらつきが大きくなる傾向が見られた. プラークについては, 対照群の50歳代以下では認められず, 70歳代でも, 両側とも9.5%の出現率であったが, 百寿者では右40%, 左36%と増加しており, 左右どちらかにプラークをみる例は60%に達した. 百寿者例での頸動脈内中膜は健常成人例で見られた加齢変化の延長線上にある肥厚度を示し, これと平行してプラークの出現率も増大していた. 以上から, これら動脈硬化の進行が, ヒトの最大寿命を決定する要因の一つとして, 重要であることが示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.34.139