血液粘度と脳循環
著者らは血液粘度と脳循環との関連を検討する目的で老年者の各種多血症6例 (男, 平均年齢66.6±4.6歳), および47歳ストレス多血症1例 (女) 計7例についてPET study により局所脳血流量 (CBF) および局所脳酸素代謝率 (CMRO2) を瀉血 (総量800~1,000ml) 前後で測定し, 血液粘度の面より脳循環動態につき検討した. CBFは血液粘度およびCMRO2両者との間に相関性を示し, この際, 高血液粘度 (5.0cp以上, ずり速度: 94.5sec-1) でもCBFと相関が全例でみられた点注目される. なお血液粘度は cerebral oxygen trans...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 30; no. 3; pp. 174 - 181 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.03.1993
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.30.174 |
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Summary: | 著者らは血液粘度と脳循環との関連を検討する目的で老年者の各種多血症6例 (男, 平均年齢66.6±4.6歳), および47歳ストレス多血症1例 (女) 計7例についてPET study により局所脳血流量 (CBF) および局所脳酸素代謝率 (CMRO2) を瀉血 (総量800~1,000ml) 前後で測定し, 血液粘度の面より脳循環動態につき検討した. CBFは血液粘度およびCMRO2両者との間に相関性を示し, この際, 高血液粘度 (5.0cp以上, ずり速度: 94.5sec-1) でもCBFと相関が全例でみられた点注目される. なお血液粘度は cerebral oxygen transport とは有意の相関性を示さなかった. 以上の成績から, 老年者多血症に対する瀉血は血液粘度低下と同時に脳循環, 脳酸素代謝の改善をもたらし, 血栓形成の危険を少なくする意味で臨床的に意義あることと考えられた. 温泉湯治老年者に脳梗塞発症が稀ならずみられ, 発症が3:00より6:00に集中していた点に注目して発症機転を検討した. 脳血管障害後遺症男性5例を対象として, 温泉浴 (42℃, 10分, 16:00) 後の血液粘度の日内変動を検討したところ, 淡水浴に比し4:00から12:00に至る時間帯で血液粘度は有意に上昇した. 同時に測定した24時間血圧では, 同様に真夜から翌朝8:00にかけて血圧低下傾向が淡水浴に比してより著明に観察された. 温泉浴時の種々の浴温度の凝固・線溶系におよぼす影響について健康男性10例を対象として検討した. 42℃10分浴では開始後15分にtPAは増加し, 47℃3分浴では15分後にPAI-1は著増, tPA増加は消失した. TATには著変はなく, 一次線溶能亢進と推定された. 人臍帯静脈内皮細胞を用いた in vitro 実験では培養温度の上昇につれPAI-1は培養液中に増加し, 高温浴時のPAI-1増加が血管内皮細胞由来によることが推定された. 以上の in vivo, in vitro 成績から, 温泉浴客に稀ならずみられる脳梗塞発症に高温浴が血液粘度, 血圧および線溶系を介して病因的役割を演じている可能性が推定された. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.30.174 |