超音波断層法による総頸動脈壁厚と脈圧との関係
平成7年9月から平成11年8月までの4年間の一連の入院患者における降圧剤および高脂血症治療剤非服用者で, 脂質・糖代謝, 血圧に影響を及ぼしうる栄養障害や心・腎機能障害のない者を対象として, 既知の動脈硬化危険因子に加えて平均血圧 (2/3拡張期血圧+1/3収縮期血圧) と脈圧 (収縮期血圧-拡張期血圧) との2つを加味し, 総頸動脈硬化性病変との関係を検討した. 総頸動脈硬化性病変については, 日立EUB-565の超音波断層装置と7.5MHzリニア型探触子を用いて総頸動脈の内膜中膜複合体の厚さ (以下頸動脈壁厚) を計測した. 高血圧群 (平均血圧≧107mmHg) は53人と少なかったこと...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 37; no. 6; pp. 479 - 485 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.06.2000
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.37.479 |
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Summary: | 平成7年9月から平成11年8月までの4年間の一連の入院患者における降圧剤および高脂血症治療剤非服用者で, 脂質・糖代謝, 血圧に影響を及ぼしうる栄養障害や心・腎機能障害のない者を対象として, 既知の動脈硬化危険因子に加えて平均血圧 (2/3拡張期血圧+1/3収縮期血圧) と脈圧 (収縮期血圧-拡張期血圧) との2つを加味し, 総頸動脈硬化性病変との関係を検討した. 総頸動脈硬化性病変については, 日立EUB-565の超音波断層装置と7.5MHzリニア型探触子を用いて総頸動脈の内膜中膜複合体の厚さ (以下頸動脈壁厚) を計測した. 高血圧群 (平均血圧≧107mmHg) は53人と少なかったことより, 以下の検討では, 正常血圧群 (平均血圧<107mmHg) 358人 (年齢: 67.8±15.1歳), 男性182人 (年齢: 65.2±15.9歳), 女性176人 (年齢: 70.4±13.7歳) のみを対象として行った. 脈圧3分位, すなわち50mmHg以下 (PP1), 51~65mmHg (PP2), 66mmHg以上 (PP3) 別に検討すると, 脈圧が大きい群ほど年齢は有意に高く (p: 0.0011), 女性の頻度が多かったが (p=0.0315), BMI, Brinkman index, 脂質代謝, 尿酸, 糖代謝といった背景因子には差異はなかった. 平均血圧と脈圧との関係では男女ともに正の相関を認め, 各々r=0.31 (p<0.001) であった. 脈圧と血圧パラメーターとの関係については, 脈圧が大きい群ほど収縮期血圧, 平均血圧, 脈圧は有意に大きかったが (各々p<0.001), 拡張期血圧では逆に小さかった (p=0.0275). 脈圧と頸動脈壁厚との関係では, 男女ともに脈圧が大きい群ほど頸動脈壁厚は有意に大きかった (各々p<0.001, p=0.0042). 頸動脈壁厚 (1.0mm以上を肥厚と定義) を目的変数とし, 平均血圧と脈圧を含めた各種危険因子を説明変数としたロジスティック回帰分析では, 男性では脈圧とLDL-C, 女性では年齢, Brinkman index, T-Chol, HDL-C, 全体では男性, 年齢, Brinkman index, 脈圧, TG, LDL-Cが有意な独立危険因子であった. これらより, 脈圧も頸動脈壁厚の危険因子として重要であると考えられる. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.37.479 |