amezinium metilsulfate と dihydroergotamine mesylate の併用が有効であった食後性低血圧の1例

食後性低血圧は高齢者の失神の原因として重要とされているが, 病態の詳細は不明で, 治療法は確立されていない. 今回, 長時間にわたる失神をくり返し薬剤投与によって予防し得た症例を経験したので報告する. 症例は86歳男性. 脳出血後遺症で入院中, 夕食後に血圧低下とともに意識消失を繰り返し, 約1~2時間後, 血圧上昇に伴って自然に意識が回復した. 食後性低血圧による失神と考え midodrine hydrochloride, amezinium metilsulfate, dihydroergotamine mesylate を投与した. しかし, いずれも単独の投与では食後に50~60mmH...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 36; no. 7; pp. 499 - 502
Main Authors 安達, 典子, 近藤, 昭, 林, 恭一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.07.1999
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.36.499

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Summary:食後性低血圧は高齢者の失神の原因として重要とされているが, 病態の詳細は不明で, 治療法は確立されていない. 今回, 長時間にわたる失神をくり返し薬剤投与によって予防し得た症例を経験したので報告する. 症例は86歳男性. 脳出血後遺症で入院中, 夕食後に血圧低下とともに意識消失を繰り返し, 約1~2時間後, 血圧上昇に伴って自然に意識が回復した. 食後性低血圧による失神と考え midodrine hydrochloride, amezinium metilsulfate, dihydroergotamine mesylate を投与した. しかし, いずれも単独の投与では食後に50~60mmHgの血圧低下とそれに伴う失神がみられた. そこで, amezinium metilsulfate と dihydroergotamine mesylate の併用を試みたところ, 食後の血圧低下は30mmHg程度となり失神には至らなかった. amezinium metilsulfate は内因性ノルアドレナリン作用を増強させ, 主に動脈系の血管抵抗を増加することによって血圧を上昇させる. これに対して, dihydroergotamine mesylate は血液の静脈プーリングを防止して静脈環流量を増加させることによって血圧を上昇させる. 本症例では食後性低血圧に伴う失神を予防するのに作用機序の異なる2種類のα受容体刺激薬の併用が有効であり, 高齢者の食後性低血圧の治療におけるこれらの薬剤の併用療法の意義について, 今後更に検討される価値があると思われる.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.36.499