訪問診療対象高齢患者における在宅死を可能にする因子の検討
在宅療養を経て死亡した患者を対象に, 24時間医療サービスの有無が在宅死の成立を規定する因子であるか否か, 在宅死を可能にするその他の因子は何かを検討した. Kおよび, M訪問看護ステーションにおいて訪問看護サービスを受け, 在宅療養を経て死亡した81名の訪問看護記録を retrospective に検討した. 対象を自宅で死亡した群と病院あるいは老健施設で死亡した群に分け, 患者特性, 終末期における本人, 家族, 医療者の意向, 介護環境について2群間を比較した. 自宅死亡群では, 死亡1カ月前の日常生活自立度のランクCが有意に多かった (48.1% vs. 84.6%). 死亡場所の意向...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 38; no. 3; pp. 399 - 404 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.05.2001
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.38.399 |
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Summary: | 在宅療養を経て死亡した患者を対象に, 24時間医療サービスの有無が在宅死の成立を規定する因子であるか否か, 在宅死を可能にするその他の因子は何かを検討した. Kおよび, M訪問看護ステーションにおいて訪問看護サービスを受け, 在宅療養を経て死亡した81名の訪問看護記録を retrospective に検討した. 対象を自宅で死亡した群と病院あるいは老健施設で死亡した群に分け, 患者特性, 終末期における本人, 家族, 医療者の意向, 介護環境について2群間を比較した. 自宅死亡群では, 死亡1カ月前の日常生活自立度のランクCが有意に多かった (48.1% vs. 84.6%). 死亡場所の意向は, 患者・家族・医療者のいずれにおいても自宅での死を希望する意向を表明している例が自宅群で有意に多かった. その他の患者特性 (年齢, 性別, 主病名, 痴呆度, 訪問期間), 介護環境 (同居家族数, 介護者, 補助介護者の有無) には有意差はなかった. 入院の理由は, 病状の悪化が最も多く, 急激な病状の悪化の際に, 入院を選択する結果と推察された. 24時間訪問診療体制がある施設 (M) とない施設 (K) では, Mの方が, 自宅死亡率が高い傾向があった (42% vs. 27%, p=0.18). 在宅死を希望する意思表示は, 患者・家族・医療者のいずれにおいてもMで多い傾向が認められた. 以上から, 在宅死を規定する因子として, 死亡1カ月前のADLが寝たきりに低下していること, 患者・家族・医療者の在宅死を希望する意思表示の存在が明らかになった. また, 在宅ターミナルケアを支えるには, 24時間の医療体制は必要な条件であることが推察された. 24時間の訪問診療体制を持つ施設では, 医療者側から在宅での看取りを家族に提案していることが推察された. 在宅ターミナルケアを充実させるには, 在宅医療サービスの24時間体制に加えて, サービス提供者側からの働きかけが必要と思われた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.38.399 |