喀痰中誘導型β-lactamaseの測定 特に緑膿菌感染症における臨床的検討
誘導型β-lactamaseの臨床的証明ならびに薬剤不活化に及ぼす影響を検討する目的で, 緑膿菌による慢性呼吸器感染症患者5名を対象に, piperacillin (PIPC) を3日間投与し, その間2日目にcefmetazole (CMZ) を併用投与し, 経時的に採取した喀痰中のβ-lactamase活性をUV法にて測定した. また同時に喀疾中薬剤濃度も測定した. その結果, 5例中1例は3日間を通じてβ-lactamase活性に変化はなかったが, 3例ではCMZ併用時に喀痰中β-lactamase活性はPIPC単独時に比較して2~3倍 (平均0.03unit/ml) に上昇し, 内2例...
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Published in | 感染症学雑誌 Vol. 63; no. 4; pp. 400 - 409 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本感染症学会
01.04.1989
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Summary: | 誘導型β-lactamaseの臨床的証明ならびに薬剤不活化に及ぼす影響を検討する目的で, 緑膿菌による慢性呼吸器感染症患者5名を対象に, piperacillin (PIPC) を3日間投与し, その間2日目にcefmetazole (CMZ) を併用投与し, 経時的に採取した喀痰中のβ-lactamase活性をUV法にて測定した. また同時に喀疾中薬剤濃度も測定した. その結果, 5例中1例は3日間を通じてβ-lactamase活性に変化はなかったが, 3例ではCMZ併用時に喀痰中β-lactamase活性はPIPC単独時に比較して2~3倍 (平均0.03unit/ml) に上昇し, 内2例の喀痰中のPIPCピーク濃度は単独投与時の73, 38%に減少した. これら3例から分離した緑膿菌株はin vitroで強い誘導能 (平均25倍) を有していた. 残りの1例では3日間を通じて高い活性値 (平均: 0.16unit/ml) が認められ, 本症例の喀疾中にはPIPC, CMZ共に検出し得なかった. この症例では分離した6株の緑膿菌の内1株が構成型高度β-lactamase産生株であり, その株の産生β-lactamaseによる影響と考えられた. 以上の成績より, 誘導基質であるCMZ投与時に感染巣内においてβ-lactamaseが誘導される現象と, さらにその誘導β-lactamaseによる薬剤不活が認められ, これらβ-lactamaseの臨床効果に及ぼす影響が示唆された. |
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ISSN: | 0387-5911 1884-569X |
DOI: | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.63.400 |