縄文集落の復原事例―岩手県御所野遺跡の整備から

岩手県一戸町の御所野遺跡では,平成5年に国指定史跡となったあと土地の公有化を進め整備事業に着手した。遺跡は中央広場の配石遺構を中心として,東西に4~5ヶ所に竪穴住居が群在しながら全体が扇形を呈する縄文時代中期の集落跡である。遺跡そのものは保存され,しかも比較的早い段階で国指定史跡となったため,内容確認調査は全体の16パーセントしか実施していないが,集落の構造を把握するため遺構検出だけは徹底しており50数パーセントとなっている。この確認調査等により中期中葉から末葉までの竪穴住居跡は少なくとも600棟以上と推定しており,おおよその分布も把握している。そのうち調査した竪穴住居は120棟強であり,限ら...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本考古学 Vol. 10; no. 15; pp. 129 - 138
Main Author 高田, 和徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本考古学協会 2003
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1340-8488
1883-7026
DOI10.11215/nihonkokogaku1994.10.129

Cover

More Information
Summary:岩手県一戸町の御所野遺跡では,平成5年に国指定史跡となったあと土地の公有化を進め整備事業に着手した。遺跡は中央広場の配石遺構を中心として,東西に4~5ヶ所に竪穴住居が群在しながら全体が扇形を呈する縄文時代中期の集落跡である。遺跡そのものは保存され,しかも比較的早い段階で国指定史跡となったため,内容確認調査は全体の16パーセントしか実施していないが,集落の構造を把握するため遺構検出だけは徹底しており50数パーセントとなっている。この確認調査等により中期中葉から末葉までの竪穴住居跡は少なくとも600棟以上と推定しており,おおよその分布も把握している。そのうち調査した竪穴住居は120棟強であり,限られた資料をもとにして縄文集落を復原しなければならず,実際は非常に難しいが,得られた情報を分析しながら集落構造とその変遷を把握しながら整備している。 竪穴住居跡や掘立柱建物跡の復原については,特に竪穴住居の場合,焼失住居がいくつか発見されており,その調査で具体的に土屋根住居を確認し残存する炭化材を検討しながら建物の復原図を作成している。整備ではあらかじめ復原図をもとに実験復原を行ない,2年間温湿度や形状変化などを観測してその後燃やしている。以上の住居建設から焼失までの実験により得られた資料も多く,そのデーターにより土屋根住居を検証するとともに,再度図面を作成し最終的に12棟の竪穴住居を復原した。 竪穴住居については建築物という側面のほか「住まい」の視点も重要である。幸い焼失住居のなかには遺物がかなり残されており,それを分析することにより内部の理解も可能になってくる。今回は特に竪穴内部に祭祀空間を想定し,共伴する可能性の強い4棟の竪穴ごとの出土遺物を検討したところ,それぞれの竪穴で機能が異なる可能性も指摘できている。 以上調査で得られた情報をもとに集落全体を把握しながら復原した縄文集落の1事例を紹介する。 縄文集落論(御所野遺跡の集落分析) ・縄文集落全体の捉え方, ・1時期の竪穴住居の捉え方 ・各竪穴住居の機能について 建築史学(建物の仕様・構造) ・焼失住居からの土屋根住居の確認・想定復原図の作成と実験建築 ・焼失実験
ISSN:1340-8488
1883-7026
DOI:10.11215/nihonkokogaku1994.10.129