術後感染性腸炎, 特にMRSA腸炎の実態 全国アンケート調査結果を中心に

近年, 黄色ブドウ球菌, 特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) による感染症が増加傾向にあり, この中でMRSAによる術後感染性腸炎の症例も見られるようになってきた. このため, 1980年以降の本邦における術後感染性腸炎の実態を明らかにするため, 全国アンケート調査を行なった. 全国875施設 (外科学会認定施設) にアンケートを行ない, 370施設 (42.3%) より回答を得た. このうち25施設から67症例の報告を頂き, さらに文献例20症例を加-えた87例について検討を行なった. 術後感染性腸炎は, 1985年以降に多く認められ, MRSAによるものは, 関東を中心にそれよ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in感染症学雑誌 Vol. 63; no. 7; pp. 701 - 707
Main Authors 桜井, 敏, 品川, 長夫, 真下, 啓二, 保里, 恵一, 由良, 二郎, 水野, 章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.07.1989
Online AccessGet full text
ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.63.701

Cover

More Information
Summary:近年, 黄色ブドウ球菌, 特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) による感染症が増加傾向にあり, この中でMRSAによる術後感染性腸炎の症例も見られるようになってきた. このため, 1980年以降の本邦における術後感染性腸炎の実態を明らかにするため, 全国アンケート調査を行なった. 全国875施設 (外科学会認定施設) にアンケートを行ない, 370施設 (42.3%) より回答を得た. このうち25施設から67症例の報告を頂き, さらに文献例20症例を加-えた87例について検討を行なった. 術後感染性腸炎は, 1985年以降に多く認められ, MRSAによるものは, 関東を中心にそれより以北に多く認められた. 男性に多く, 平均年齢は, 57.9歳であった. 術後2~5日までに下痢・発熱で発症する例が多く, 発症前にほぼ全例がセフェム系抗生剤の投与を受けており, そのほとんどが第三世代セフェム剤であった. MRSA症例のうち6例 (24%) は, 死の転帰をとり, また数施設では, 短期間にMRSAによる術後感染性腸炎の続発が見られ, 院内感染が示唆された.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.63.701