ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)における新規自家和合性 S3' ハプロタイプの解析および汎用性自家和合性 PCR マーカーの開発
ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の大多数の栽培品種は,S-RNase 依存性配偶体型自家不和合性を示す.本研究では,未解明の 1K0-26 の自家和合性機構を解明するため,まず,1K0-26 と同じ S-RNase 遺伝子型で自家不和合性の系統 1C1-10 と 1K0-26 の正逆交雑を行った.その結果,1K0-26 は雌ずい側の自家不和合性認識機構は正常であるが,花粉側の認識機構に変異を生じており,自家和合化していることが明らかとなった.また 1K0-26 の自殖後代では,S3S3 と S3S7 がほぼ 1 : 1 で分離したことから,1K0-26 の S3 ハ...
Saved in:
Published in | Journal of the Japanese Society for Horticultural Science Vol. 78; no. 1; pp. 40 - 48 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
一般社団法人 園芸学会
2009
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 1882-3351 1882-336X |
DOI | 10.2503/jjshs1.78.40 |
Cover
Summary: | ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の大多数の栽培品種は,S-RNase 依存性配偶体型自家不和合性を示す.本研究では,未解明の 1K0-26 の自家和合性機構を解明するため,まず,1K0-26 と同じ S-RNase 遺伝子型で自家不和合性の系統 1C1-10 と 1K0-26 の正逆交雑を行った.その結果,1K0-26 は雌ずい側の自家不和合性認識機構は正常であるが,花粉側の認識機構に変異を生じており,自家和合化していることが明らかとなった.また 1K0-26 の自殖後代では,S3S3 と S3S7 がほぼ 1 : 1 で分離したことから,1K0-26 の S3 ハプロタイプに変異が生じていることが示唆された.次いで,S3 ハプロタイプのゲノム構造を解析した結果,花粉 S 遺伝子である SFB3(S haplotype-specific F-box gene)のコード領域内に約 7.1 kbp の挿入配列が存在し,予想されるアミノ酸配列は正常型 SFB でみられるものの約半分の長さになっていた.すなわち,1K0-26 は変異型 S3 ハプロタイプ(S3' ハプロタイプ)を有し,このため自家和合性を示すものと考えられた.S3' ハプロタイプにみられる挿入配列には,Sf ハプロタイプの SFB に存在する挿入配列と相同性がみられる部位が存在した.そこで両者に保存されている領域よりプライマーを作製し,ウメの 86 品種・系統を供試し PCR 分析したところ,38 品種・系統が Sf ハプロタイプのみを,1 系統が S3' ハプロタイプのみを,また 3 品種・系統がその両者を有することが明らかになった.ウメの自家和合性のマーカー利用選抜育種について議論した. |
---|---|
ISSN: | 1882-3351 1882-336X |
DOI: | 10.2503/jjshs1.78.40 |