症例 Sick sinus症候群(SSS)の一剖検例-その刺激伝導系の連続切片による病理学的研究

洞停止により失神様発作をきたす67歳の女性に約4年の内科的経過観察後,人工ペースメーカ植込術を施行したが約3ヵ月後脳軟化症にて死亡した.刺激伝導系の病理学的検索により,(1)洞結節・房室結節の高度萎縮 (2) 房室結節アブ探一チ部の脂肪化 (3) 心房内伝導路の肥大を認めた. 洞結節・房室結節の萎縮の病因としては,第1に形態学的に多少の裏付けのみられる虚血説,第2に神経末端よりの活性物質による結節細胞障害説が考えられた. 心電図所見との対応上特異なことは房室接合部の細胞減少にもかかわらず,心電図,ヒス束心電図にて房室伝導障害を示す所見がみられず,自動能低下のみみられたことで,房室結節周辺の伝導...

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Published in心臓 Vol. 8; no. 1; pp. 51 - 59
Main Authors 若杉, 茂俊, 城, 忠文, 戸山, 靖一, 谷口, 春生, 岡田, 了三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1976
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Summary:洞停止により失神様発作をきたす67歳の女性に約4年の内科的経過観察後,人工ペースメーカ植込術を施行したが約3ヵ月後脳軟化症にて死亡した.刺激伝導系の病理学的検索により,(1)洞結節・房室結節の高度萎縮 (2) 房室結節アブ探一チ部の脂肪化 (3) 心房内伝導路の肥大を認めた. 洞結節・房室結節の萎縮の病因としては,第1に形態学的に多少の裏付けのみられる虚血説,第2に神経末端よりの活性物質による結節細胞障害説が考えられた. 心電図所見との対応上特異なことは房室接合部の細胞減少にもかかわらず,心電図,ヒス束心電図にて房室伝導障害を示す所見がみられず,自動能低下のみみられたことで,房室結節周辺の伝導性保持と自動能は別の機序によるものであることが示唆された.このことはSSSにおいて心臓の自動能低下の表現が前面にでて,伝導障害がかくれている場合に,房室伝導系の器質的障害を見逃す危険があることを示し,興味深い所見である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.8.1_51