Lethal triadに陥った外傷出血症例に対する遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤(ノボセブン®)投与の有効性

外傷出血症例に対する遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤(以下第VII因子製剤)投与の有効性は,未だ十分に証明されていない。我々は,大量出血・止血術後のコントロールできない凝固障害,出血傾向に対して,第VII因子製剤の投与が有効な治療になりうると考え,本臨床研究を行った。20単位以上の赤血球輸血と10単位以上の新鮮凍結血漿を要し,手術・経カテーテル的動脈塞栓術等の止血術を行っても出血傾向が制御不能のlethal triad(アシドーシス,低体温,凝固障害)に陥った外傷出血症例 5 例に第VII因子製剤を投与した。対象患者の動脈血液ガス分析では,第VII因子製剤投与前のpHは7.02 ±...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 20; no. 3; pp. 133 - 141
Main Authors 清水, 健太郎, 田中, 裕, 鍬方, 安行, 吉矢, 和久, 小倉, 裕司, 田崎, 修, 杉本, 壽
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2009
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.20.133

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Summary:外傷出血症例に対する遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤(以下第VII因子製剤)投与の有効性は,未だ十分に証明されていない。我々は,大量出血・止血術後のコントロールできない凝固障害,出血傾向に対して,第VII因子製剤の投与が有効な治療になりうると考え,本臨床研究を行った。20単位以上の赤血球輸血と10単位以上の新鮮凍結血漿を要し,手術・経カテーテル的動脈塞栓術等の止血術を行っても出血傾向が制御不能のlethal triad(アシドーシス,低体温,凝固障害)に陥った外傷出血症例 5 例に第VII因子製剤を投与した。対象患者の動脈血液ガス分析では,第VII因子製剤投与前のpHは7.02 ± 0.20,base excessは-20.3 ± 5.2 mmol/l,体温は,34.0 ± 0.8°Cであった。第VII因子製剤(計24mg)を投与した結果,全症例において短時間で有効な止血効果が得られた。第VII因子製剤投与3時間後の動脈血液ガス分析では,pHは7.34 ± 0.13,base excessは-5.3 ± 6.4 mmol/l,体温は36.1 ± 0.3°Cと全症例においてアシドーシス,低体温,凝固障害ともに有意に改善した(p<0.05 vs. 第VII因子製剤投与前)。大量出血に伴い標準的止血術後も出血傾向が制御不能のコントロールできない外傷出血症例に対し,第VII因子製剤投与は有効な止血効果を発揮する可能性がある。今後,第VII因子製剤の適切な使用基準,使用量を明らかにする必要がある。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.20.133