特発性細菌性胸膜炎(SBEM)を合併した難治性肝性胸水に経頸静脈性肝内門脈体循環短絡術(TIPS)が奏効したC型肝硬変症の1例

症例は69歳男性.C型肝硬変症で経過観察中であった.非代償期であり,腹水を認めていたが次第に利尿剤,アルブミン製剤投与にも抵抗性となった.発熱,呼吸困難を認め,入院となった.入院時,大量の右側胸水と大量の腹水貯留を認めた.胸水穿刺にて,右側胸水は褐色調で混濁を示す滲出性胸水であったが,腹水は淡黄色で清明な漏出性腹水であった.非代償性肝硬変による肝性胸水に細菌感染が合併した特発性細菌性胸膜炎と診断した.利尿剤,抗生剤投与によって一時的に改善したが,再発を繰り返すため,経頸静脈性肝内門脈体循環短絡術(TIPS)を施行した.術後,一過性の肝性脳症を認めたが,胸水,腹水は次第に減少し,23カ月後の現在...

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Published in肝臓 Vol. 48; no. 9; pp. 439 - 445
Main Authors 水腰, 英四郎, 山下, 竜也, 加賀谷, 尚史, 松井, 修, 酒井, 佳夫, 本多, 政夫, 中本, 安成, 金子, 周一, 北村, 和哉, 守護, 晴彦, 大石, 尚毅, 酒井, 明人, 荒井, 邦明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2007
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.48.439

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Summary:症例は69歳男性.C型肝硬変症で経過観察中であった.非代償期であり,腹水を認めていたが次第に利尿剤,アルブミン製剤投与にも抵抗性となった.発熱,呼吸困難を認め,入院となった.入院時,大量の右側胸水と大量の腹水貯留を認めた.胸水穿刺にて,右側胸水は褐色調で混濁を示す滲出性胸水であったが,腹水は淡黄色で清明な漏出性腹水であった.非代償性肝硬変による肝性胸水に細菌感染が合併した特発性細菌性胸膜炎と診断した.利尿剤,抗生剤投与によって一時的に改善したが,再発を繰り返すため,経頸静脈性肝内門脈体循環短絡術(TIPS)を施行した.術後,一過性の肝性脳症を認めたが,胸水,腹水は次第に減少し,23カ月後の現在,胸腹水の貯留はなく経過良好で外来通院中である.特発性細菌性胸膜炎は予後不良の病態とされるが,TIPSの施行が有効であった1例と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.48.439