消化器癌フォロー中に異時性重複癌の発症からLynch症候群の診断に至った1例

Lynch症候群は遺伝性大腸癌の中でもっとも頻度が高い疾患であるが,臨床的特徴が乏しく日常臨床で見逃されやすい.本報告では,異時性重複癌の発症を契機にLynch症候群の診断に至った65歳女性の症例を紹介する.患者は42歳で上行結腸癌,55歳で横行結腸癌に対して手術を受け,術後は転移や再発はなかった.62歳時にPET-CT検査で肝門部リンパ節腫大が指摘され,原発不明癌(膵原発疑い)と考えられgemcitabine+nab-paclitaxelによる治療が行われた.腫瘍マーカー再上昇時にMSI検査を実施し,MSI-highの結果を得たため,pembrolizumab治療により完全奏効した.その後,...

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Published in遺伝性腫瘍 Vol. 25; no. 1; pp. 20 - 25
Main Authors 藤田 顕弘, 上杉 尚正, 末田 侑香, 高橋 剛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会 04.07.2025
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ISSN2435-6808
DOI10.18976/jsht.25.1_20

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Summary:Lynch症候群は遺伝性大腸癌の中でもっとも頻度が高い疾患であるが,臨床的特徴が乏しく日常臨床で見逃されやすい.本報告では,異時性重複癌の発症を契機にLynch症候群の診断に至った65歳女性の症例を紹介する.患者は42歳で上行結腸癌,55歳で横行結腸癌に対して手術を受け,術後は転移や再発はなかった.62歳時にPET-CT検査で肝門部リンパ節腫大が指摘され,原発不明癌(膵原発疑い)と考えられgemcitabine+nab-paclitaxelによる治療が行われた.腫瘍マーカー再上昇時にMSI検査を実施し,MSI-highの結果を得たため,pembrolizumab治療により完全奏効した.その後,肉眼的血尿を主訴に泌尿器科で精査の結果,膀胱癌と診断され,同様にMSI-highであった.家族歴の詳細な聴取と遺伝学的検査によりMLH1の病的バリアントを認め,Lynch症候群と診断された.
ISSN:2435-6808
DOI:10.18976/jsht.25.1_20